冬のお風呂、安全宣言 ヒートショックを防ぐ 5つの合言葉(第672号 令和7年12月1日)

冬のお風呂、安全宣言
ヒートショックを防ぐ5つの合言葉

 
潮江地区 北村 容一郎

 
だんだんと冬が近づいてまいりました。私は残念ながらヒートショックを観た経験はありません。しかし、毎年この時期に「ヒートショック」が話題になります。そこで今回は信頼できる公的データや各自治体の発信をもとにまとめてみました。実際の臨床との乖離があるかと思われますが、どうか温かい目でお読みください。
「ヒートショック=高齢者の話」と思われがちですが、2024年年末の著名人の入浴中の事故報道をきっかけに、冬場の浴室・脱衣所の温度管理の重要性が再び強く呼びかけられました。これは「必ず高齢者」という枠に当てはまらない中年層の被害で、「若いから大丈夫」ではないことを改めて示した出来事でした。つまり、家の中の温度差を減らすことが、全年齢にとって最優先の予防策です。
入浴関連事故の輪郭
•兵庫県監察医務室(2024年版):「浴槽内死亡」241件(うち解剖188件)。内訳に溺水が相当数含まれ、家庭内での急変が見過ごせない規模で起きていることがわかります。
•消費者庁(2024年12月コラム):不慮の事故のうち「溺死・溺水」は12〜1月に増加。
•東京23区(令和4年):死亡直前の行動が「入浴中」1,704件。冬に集中・高齢者が大半という傾向が続いています。
•海外の動き:英国では毎冬、寒さそのものを健康リスクと捉えた Cold-Health Alert を地域ごとに発表し注意喚起しています。
ヒートショックの流れ
暖かい部屋→冷えた脱衣所/浴室→熱い湯という「温度ジェットコースター」で、血圧が急に上がったり下がったりします。結果、めまい・失神・不整脈・脳卒中・心筋梗塞につながり、最悪は浴槽内での溺水に至ります。
高齢者に多いのは事実ですが、持病・飲酒・長湯・高温浴・寒い脱衣所が重なると、働き盛りや若い方でも起こり得ます。
体の中で何が起きる?
•寒い場所:交感神経が優位→血管収縮・血圧上昇。
•熱い湯:末梢血管が急に拡張→血圧低下・ふらつき。
•立ち上がり:足に血がたまりやすく起立性低血圧→失神のきっかけに。
•不整脈:急な自律神経変動+脱水・電解質不足(K・Mg)で起こりやすい。
高齢者以外でリスクが上がる人
•40〜60代でも:高血圧
・糖尿病・心臓病・脳梗塞後、不整脈がある方
•薬の影響:降圧薬、利尿薬、β遮断薬、向精神薬など(血圧調節に影響)
•生活状況:飲酒直後、発熱・下痢後の脱水、サウナの温冷交代、熱め&長湯の習慣
「5つの予防法」
1.脱衣所・浴室は18℃以上(ご高齢・持病ありは20℃前後を目標)
温度計を置いて『見える化』。入浴前に短時間でも暖房を入れる。
2.湯は41℃以下、できれば38〜40℃
あつ湯は気持ちよくても血圧が跳ねます。
3.つかるのは10分以内
タイマーを押してから入浴。のぼせ・脱水の予防に。
4.入浴の前後にコップ1杯の水(約150〜250mL)
冬でも体は乾きます。ふらつき・不整脈のリスクを下げます。
5.ゆっくり動く(特に立ち上がり)
座位→半立位→立位と段階起立。手すり・浴槽の縁を活用。
目安として、WHOの住宅と健康ガイドラインは『寒冷期の最低18℃を強く推奨(高齢者・持病のある方はより高めが望ましい)。』「リビングだけ暖かい、脱衣所が寒い」をなくしましょう。
こんな症状が出たら中止・受診検討
•めまい、動悸、胸痛、強い頭痛、片側のしびれ・力が入らない、ろれつが回らない
→すぐ出浴、浴槽の栓を抜いて水位を下げ、同居家族を呼ぶ。改善しなければ119番。
温かいお風呂は心身をリラックスさせてくれますが、一方で「環境による急変」が命に関わるリスクを伴うこともあります。特に年末・冬場は気温が急に下がる日も多いため、浴室・脱衣所の温度差対策がより重要となります。
また、中年・若年であっても「環境+体調+薬」の組み合わせ次第でヒートショックの被害にあう可能性があります。ご自身の健康状態・生活環境を見直し、安全に配慮した入浴習慣をぜひ取り入れてください。
安全で快適な入浴時間を、ぜひご家族皆さまでお迎えください。
データ出典(主要)
•兵庫県監察医務死因調査統計年報 令和6(2024)年版:「浴槽内死亡死因年齢別」=総数241(解剖188)、溺水73(70)
•消費者庁(2024/12/19コラム):高齢者の不慮の事故、溺死・溺水が冬に増える
•政府広報オンライン:「湯温41℃以下」「入浴10分まで」など実践ルール
•WHO:寒冷期は室温18℃以上を強く推奨(脆弱者は+2〜3℃高め推奨)
•尼崎市消防局(公式Instagram):ヒートショック予防法5選(38〜40℃、10分以内)
•神戸市住民向けページ:兵庫の実践ポイント。
•UKHSA:Cold-Health Alert