第34回 目の愛護デー記念健康講座(第670号 令和7年10月1日)

尼崎市眼科医会 萩原 善行

 10月4日土曜、兵庫県・尼崎市・伊丹市眼科医会主催の「第34回・目の愛護デー記念健康講座」が開催されました。当日午前は時々土砂降り状態も混じる雨模様でしたが午後には小雨となり、会場の塚口駅前ライクスホールには大勢の方が来場されました。
 開会の御挨拶は伊丹市眼科医会会長の小澤孝好先生でした。目の愛護デーは歴史が古く、1931年中央盲人福祉協会が「視力保存デー」を定め、1947年現在の名前に改称されました。半世紀前迄視力障害の原因は感染症でしたが、今では緑内障が第一位となっています。
 次に尼崎市保健局健康増進課の片山昌也様が壇に上がられ、松本眞尼崎市長からのお祝いメッセージを代読されました。
 今年の演者は公立学校共済組合近畿中央病院(以下近中)眼科医長の松岡孝典先生、演題は「目の健康を守るために〜緑内障の正しい知識〜」でした。司会は尼崎市眼科医会副会長の鈴木先生でした。

 最初に松岡先生御自身と近中眼科医師の御紹介、近中が来年3月から診療中止となる旨の説明とお詫びを述べられました。
 本題に入り、最初に緑内障に関わる5つの正誤式クイズを中心に話が進められました。
  ①緑内障は日本の失明原因1位(〇)
  ②緑内障は目の病気で症状がある(△)
  ③若い人には関係ない病気(×)
  ④視力が問題無ければ緑内障ではない(×)
  ⑤緑内障は治療しても意味がない(×)
 以下はそれぞれについてのお話です。
  ①視力障害の第一位ということは、緑内障患者の多さ、引いては現在治療を
   受けていない緑内障患者も相当いる可能性がある。
  ②普通の生活では初期は中々気付かない。一般に視野欠損部位はあたかも黒
   く塗りつぶされたように見えると思われがちだが、実際は違う。
  ③有名な多治見スタディでの罹患率は40歳以上の5%、70歳以上の10%、40
   歳代だけでも2%。
  ④神経繊維の半分以上が障害されて初めて視野欠損が検出される。
  ⑤一度欠けた視野は戻らないが、治療すれば90%は失明を防げる。緑内障は
   進行を遅らせる以外治療が無いので、生活に支障が生じる前にしっかり
   治療することが大事。
 各論では病態(房水循環と眼圧、視神経の構造と障害)、症状と検査(視力・眼圧・網膜三次元画像解析・視野)、点眼治療(歴史、合剤、新薬、アレルギーや副作用)、手術治療(房水排出路と手術部位)について細かく判りやすい説明をされていました。補足として「緑内障に良い生活習慣」について話され、生活上勧められること(緑黄色野菜・魚・有酸素運動等)は一般の「身体に良いこと」なので、誇大広告や非科学的な噂に惑わされないように、とのことでした。

 最後に尼崎市眼科医会会長の改正良江先生から閉会のご挨拶がありました。改正先生も「緑内障は失明第一位」に言及され、本講演のような啓蒙はますます重要であると実感しました。
 松岡先生は博学な方で、「ブルーベリーは目にいい」神話の成り立ちや、コナン・ドイルが眼科医であったこと(眼科用スリットナイフで競走馬の腱に微細な傷をつけて大金をせしめる、という話がシャーロック・ホームズにあったと記憶しています)等、講演の途中で様々な小話も挿まれていました。先生お疲れ様でした。ありがとうございます。