令和6年度 市民のための健康スポーツ講座(第664号 令和7年4月1日)
2025/04/30(水)
令和7年3月8日(土) 午後2時より
市民健康開発センター ハーティ21 ハーティホールにて
健康スポーツ医学担当理事 木村 琢也
毎年恒例の市民向けのスポーツ講座を実施いたしました。講演会に先立ち、杉原尼崎市医師会長にご挨拶いただき、ご多忙の中、最後まで講演を熱心に聴講しておられました。ありがとうございました。
今回は本会会員でもあり、大阪大学大学院招聘教授(臨床遺伝子治療学)の勝谷医院の勝谷友宏先生にご講演いただきました。
勝谷先生については皆さんよくご存じのことと思います。循環器疾患(高血圧症、老年内科)をご専門にされており、薬物療法、生活習慣指導(食事・運動などいろいろ)で日々地域住民の健康ひいては国民健康の維持に努力されておられます。
皆さんご存じの様に昨年6月に診療報酬改定にて生活習慣病指導実施計画書の作成と患者さんへの説明が義務化されました。これは我々開業医の立場からすればますます面倒なことが増える。面倒くさいので算定しないというような医療経済学的いじめ(笑)もあるかと存じますが、失礼ながら一方で第一線の臨床医でおられる会員の先生方にとっても新たな知識のブラッシュアップの機会と捉えていただける一面もあるかと存じます。とくに運動目標・指導内容の項目が説明項目に多く含まれております。このことも踏まえ大変参考になる講演でした。
講演要旨(木村による)
高齢化は、日本は言うに及ばずすべての先進諸国の問題として捉えられています。特に健康寿命の延伸を達成して平均寿命との乖離をできる限り最小化することは経済的損失を最小化するためにも重要です。2070年に日本人女性の平均寿命は92歳、男性は86歳となると推測されています。そして実に4人に1人が75歳以上となります。健康寿命を延ばすためには脳卒中・循環器病対策が極めて重要で、その基本法が2018年にやっと成立したとのことでした。その目標は2040年までに健康寿命を3年延伸させることでした。なかでも高血圧への医療的介入は最も効果的と言われており収縮期血圧をわずか2mmHg低下させるだけで循環器疾患全体の死亡は2万人減少するとのことです。(がん患者などを除く、外因性の死因)高血圧患者は本邦では4,300万人で年間10万人が死亡しています。その次の外的死因が運動不足(ねたきりや麻痺なども含めて)です。
高血圧はサイレントキラーで自覚症状がなく健診が極めて重要です。自宅で患者さんに1日2回上腕カフ血圧計で測定してもらいましょう。家庭血圧を知り、健康意識を高めることが健康長寿の近道です。さて高血圧は生活習慣の乱れで起こりますが中でも日本人にとって重要なのは食塩の過剰摂取とのことです。現在、日本人は男女平均で1日9.9gの食塩摂取量です。私もやや高血圧で自主的に減塩していましたが、そのとき食品に含まれる食塩量を確認する度に、その含有量の多さに驚いていました。寿司・刺身を食べるのに醤油をべったり!は問題外です。目標は男性7.5g、女性6.5gですが、まだまだ道半ばですね。(勝谷先生に因れば、〝だし〟がいいそうです。)
勝谷先生は尼崎の適塩化推進に最も力を入れてこられた先生のお一人です。三師会、病院、大学、看護協会、学校、商工会議所など多方面への働きかけで適塩化フォーラムには2,000人を超える参加者がお見えになります。尼崎を高血圧ゼロの町にできるよう医師会にはできる限り協力していただきたいと思っています。
講演の最後に運動療法を実体験しました。運動は平均5から6mmHgの降圧効果があります。有酸素運動とレジスタンス運動(軽い筋トレ)の組み合わせです。息がやや上がる程度で、週に3・4時間は実施すると効果的です。エルゴメーター、ウォーキング、ジョギングがいいですが、あまり激しい運動は健康増進という意味では不適切です。年齢や循環器疾患・関節疾患の有無によって運動指導内容を変更してください。そしてとにかく、なだめて、すかして、褒めちぎって!少しでも運動を継続してもらってください。適度に体を動かすことは生活習慣病の予防、認知症の予防につながります。介護のお世話にならないように健康長寿を全うすることを願っております。
以上
最後にご多忙の中、貴重なご講演をいただきました勝谷先生に深謝いたします。今後とも尼崎市医師会の活動にご協力いただければ幸甚に存じます。