「(報告)尼崎市性教育講演会」(第646号 令和5年10月1日)

(報告)尼崎市性教育講演会  7・13
ハイブリッド形式(会場 尼崎市中央北生涯学習プラザ大ホール)

産婦人科医会 横田  光

 
第16回尼崎市性教育講演会を7月13日(木)にハイブリッド形式で開催いたしました。
2部構成の前半は特別講演として神戸大学感染症学の岩田健太郎教授にリモートで「感染症、予防接種、そして性教育」のテーマでお話いただきました。感染症分野でマスコミ出演も多く有名な岩田教授ですが、性教育についても熱心に発信されていて以前からこの会でお呼びしたい講師でした。多職種・複数科にまたがった参加者のために、まず性感染症についての基本的なところから、性器の/性器以外のもの、治療できるもの/体内に残るものと分類した総論、クラミジア、ヘルペス、梅毒、HPV、肝炎、HIVなどの各論、いま学校でも関心の高いHPVワクチンについてなど、さすがの簡潔に肝をおさえた説明ではじまりました。また前日にNHK-BSで放映されたという海外の性教育の紹介があり、オランダでは健康教育かつ安全教育として「科学的」であることを重要視した性教育カリキュラムを小学校から義務化することで、中絶件数や10代の出産を減少させることに成功し、子ども自身が「自分を守る」姿勢も身につき始めているということでしたが、もともとハグの習慣など接触の価値が日本と欧米では違うものの、自分と相手を大事にすることが重要なのは日本でも性教育を通じて教えたいポイントであると強調され、科学的な検証で健康政策にも働きかけることEvidence-based health policyも重要というお話でした。伊藤進一産婦人科医会長が岩田ファンとお聞きして座長をお任せしたのですが、ファンならではの文脈を心得た質問などで、活発で楽しい応答を引き出していただきました。
後半は尼崎市内での保健師でもあり、若年者の居場所作りなどでも活動されている一般社団法人enGrabの思春期保健相談士の桑原陣先生に「こどもの権利を守るために、こども・若者にやさしい「ユースフレンドリー」な思春期保健のあり方―尼崎版ユースクリニックの取り組みを通して―」を講演いただきました。ユースクリニックとは北欧発のいわば「若者のための健康相談室」ですが、性や妊娠についての悩みに直面しながら相談先に困窮している10-20代を受け入れて情報提供する仕組みのことです。現在国内でも徐々に取り組みがはじまっています。まずは平成元年大阪生まれという桑原先生のこれまでのご経歴、市の保健師としての業務、ご自身の育児など自己紹介でしたが、これがありきたりな自己紹介に終わらず、尼崎市という地域の現在に至るまでの説明と、ここを活動の場に選ばれた理由のお話にもなっていました。尼崎市では10代の中絶や出産が全国平均よりも多く、お仕事で保健行政に携わる中で、こども権利条約などの法律的な考え方の中でも妊娠や中絶に関しての部分が他の地域と比べてあまり守られていないと感じたそうです。現在、尼崎市内で若者の居場所となるところを確保し、また緊急避妊薬のOTC化や費用負担の問題で働きかけをはじめておられます。ユースクリニックの活動をしている他のNPOや子ども家庭庁のWeb相談など実際に使える情報のご紹介もありました。尼崎市で児童相談所の準備などもはじまっていますが、今後の課題も多いと感じられました。
小児科医会、教育委員会、NPO法人「性暴力被害者支援センターひょうご」にも共催として助力いただき無事に終了いたしました。予期せぬハプニングもありましたが、コロナの影響ではじまったハイブリッド形式での開催も回数を重ねてチームワークで乗り切れました。皆さまのご協力に感謝いたします。ありがとうございました。