「令和4年度 スポーツ医会総会ならびに講演会の報告」 (第632号令和4年8月1日)

令和4年度 スポーツ医会総会ならびに講演会の報告 7・16

 
尼崎市スポーツ医会 副会長 恒光 昌彦

 
7月16日に令和4年度スポーツ医会総会並びに講演会が開かれました。総会では綿谷茂樹先生の会長挨拶の後、令和3年度事業報告、令和3年度収支決算報告、監査報告、令和4年度事業計画(案)、令和4年度収支予算(案)の議題が討議され、全て了承されました。
総会の後、兵庫県立尼崎総合医療センター(AGMC)循環器内科部長の谷口良司先生を講師に招き、「超高齢社会における心血管疾患患者への治療」~心臓リハビリテーションの取り組みより~と言う演題でお話を伺いました。下記に簡単ですが内容をご報告致します。
心血管疾患の治療は、薬物療法のみならずインターベンション治療も進歩し、安全に行えるようになった。心臓リハビリテーションは、これらの治療を行った上に行うものであり、疾患の再発防止や生命予後の改善に貢献している。NMTも低値であり、classI︐Ⅱa、エビデンスレベルA~Bの評価を得ている。心臓リハビリテーションは、疾患の医学的評価、運動処方、冠動脈危険因子の是正、患者教育、カウンセリングより構成される。このため、医師のみならず、看護師、薬剤師、理学療法士、健康運動指導士など、多職種チーム医療が必要である。
心臓リハビリテーションは、心筋梗塞、狭心症、開心術後、慢性心不全、大血管疾患、末梢動脈疾患、TAVI後といった疾患に適応がある。
AGMCでは、急性期パス、入院リハ、外来退院リハ、在宅リハを行っており、CCU病棟で早期からリハビリを行っている。
人口分布における高齢世代の比率が高まるに従い、健康寿命と平均寿命の差が問題となってきた。そのような中、フレイルが問題となっている。身体的、社会的、精神的フレイルの中、社会的フレイルが最も多い。
COVID-19が蔓延して以来、特にフレイルが問題となっている。フレイルの改善には運動療法、栄養療法が必要であるが、心臓リハビリテーションでもこの2要素が重要であるので、共通点がある。また、高齢化社会に伴い心不全の罹患者が増している。
KyotoCongestiveHeartFailureregistoryでも、85歳以上が1/3を占めており、退院時に独歩で退院できた患者は78・4%でその他は車椅子、寝たきり退院であった。心臓リハビリテーションはこの様な患者に効果が期待できる。
地域と連携した外来リハビリテーション(二次救急~回復期病院との連携)、運動型健康増進施設、スポーツジムとの連携、介護リハ、通所リハとの連携も必要である。
運動処方を行うにあたっては、運動の種類、強度、時間、頻度(F(frequency)︐I(Intensity)︐ T(timeduration)︐T(typeofexercise))を決める。心不全では、40~50%VO2max︐BBorg11~13︐ CPXでのATに相当するMetsの運動強度が勧められる。頻度は週3~5回程度である。
運動の目的を明確にすることも重要である。有酸素運動とともにレジスタンス運動も加えて処方する。低負荷×高頻度=高負荷×低頻度であるので、低負荷でも頻度を増せば効果はある。
運動療法の安全性は高い。総合医療センターでの運動療法中の事故は0・5%程度である。事故を防ぐためには運動開始前に10項目のチェックリストにチェックさせるなどの配慮も行っている。運動は、いかなる年齢より開始しても効果があるので、積極的に運動療法を行う事が望まれる。