「会長就任のご挨拶 ― 所信表明 ―」 (第631号令和4年7月1日)

会長就任のご挨拶 ― 所信表明 ―

 
尼崎市医師会会長 杉原 加寿子

 

 

6月23日に開催された尼崎市医師会第11回定時代議員会において、尼崎市医師会会長に選任していただきました杉原加寿子です。
104年の歴史と伝統のある尼崎市医師会の会長に選ばれましたことは、光栄に存じますとともに改めて身の引き締まる思いです。
新型コロナウイルス感染症が発生しほぼ2年が経過しました。令和2年3月10日に尼崎市で初めての感染者が確認され、尼崎市医師会は直ちに対策本部会議を設置し保健所・病院・診療所との連携を図ってまいりました。また、新型コロナウイルス感染症等特別委員会において協議を重ねながら、医師会として新型コロナウイルス感染症に対し様々な取り組みを行ってまいりました。尼崎市臨時診療所の設置、コロナワクチン集団接種事業、第3波以降の自宅療養者に対する往診支援事業など、会員のみなさまの協力を得ながら尼崎市医師会は一丸となってこのコロナ禍に対峙してきたという自負があります。今後もその強い結束を保ちながら、医師会としての地域医療体制の構築に取り組んでまいりたいと考えております。

 
①地域包括ケアシステムの拡充
現在の超少子高齢化社会において、地域包括ケアシステムの重要性はさらに増しています。今後は「地域共生社会」の実現に向けてさらなる包括的支援体制を整備する必要がありますが、この重層的支援体制整備事業においては、高齢・障害・子ども・生活困窮者など制度ごとに分かれている支援体制を一体的に実施していくことになります。
また、プライマリ・ケアの目的は疾病の治療のみでなく地域社会における安寧な生活の維持であることから、個人が置かれた社会環境の違いによる健康格差への対応は最も重視すべき課題の一つであると日本プライマリ・ケア学会が声明を示しています。プライマリ・ケアを担う地域の医療者として、健康の社会的決定要因(Social determinants of health,SDH)によって健康格差が生じるということはいつも主眼に置いておくべき視点であり、それを縮小・是正する努力を続けなければなりません。現在尼崎市においても重層的支援体制整備事業が進もうとしていますが、医療や介護の現場における窓口として医療者の役割は大きいと思います。さまざまな行政や多職種との連携の中で、尼崎市医師会としてどのようにその役割を発揮していくかが問われることになりますので、さらなる体制の整備を検討していきたいと考えております。

 
②ポストコロナの会議の在り方
コロナ禍がもたらした社会の変化のひとつに会議のWEB化があります。診療所や自宅から、いろいろな会議や研修会・学会に参加できるようになったことのメリットは確かに大きなものがありました。ハーティホールにもインターネット環境が整備され、今後はハイブリッドでの講演会も開催していくことができるようになります。しかし、ZOOMの会議では雑談もできず、アイコンタクトによる場の雰囲気を察知することも難しく、コミュニケーションの限界という意味ではWEB化により失ったものもあるかと思います。今後対面での会議とWEBでの会議をどのように使い分けていくか、それぞれのメリット・デメリットを考え、会員同士の距離感が適切に保てるよう柔軟な対応が必要になってくるかと思います。医師会が求心力を持ち会員の帰属意識を高めるためには、顔の見える関係とともに場を共有することを大切にし、対面での会議を含め会議の在り方を検討していきたいと思っています。
私たちは同じものを見ていても、その立場や世代や状況によって見える景色は変わってきます。個々の視点を大切にしながら多様性を重んじ、「和をもって尊しとなす」という尼崎市医師会の伝統の精神を継承し、これからの尼崎市医師会がますます繁栄していけるよう、執行部一同邁進していきたいと考えております。
今後とも何卒よろしくご協力ご支援くださいますようお願い申し上げます。