「令和3年度 全校医会を開催して」 (第628号令和4年4月1日)

令和3年度 全校医会を開催して  3・24

 
学校保健委員会 委員長 塩川 美惠子

 
令和4年3月24日木曜日に、ハーティ21 1階ハーティホールとWEBでのハイブリッド開催で全校医会が開催されました。コロナ禍となって早2年が過ぎ、毎年3月に開催される全校医会は、令和元年度は残念ながら中止になりましたが、前回の令和2年度、そして令和3年度と2年連続のWEB併用での開催となりました。
全校医会は例年通り八田昌樹会長の挨拶から始まり、続いて各種報告事項が学校保健担当理事の中川勝先生から報告されました。
まず令和3年度学校保健関係表彰、県医学校保健委員会報告に続いて、岡山県で開催された第52回全国学校保健・学校医大会(完全WEB開催)の報告、第70回近畿医師会連合学校医研究協議会総会報告、令和3年度兵庫県医師会学校医研修会・学校医実務研修会、令和3年度日本医師会「学校保健講習会」についての報告がありました。
やはり、講演のテーマとして新型コロナウイルス感染症に関連したものが多い印象で長く続くコロナ禍が子どもたちの心身に大きな影響を与えているのだと感じました。
またゲーム・スマホ使用やネット依存の問題、予測されうる災害から子どもたちをいかに守るかなどがテーマとしてあげられていました。
次に令和3年度協力校医(B)の活動報告、令和4年学校医担当について報告があり、続いて心疾患対策委員会、腎疾患対策委員会、結核検診、脊柱側彎症検診および運動器検診、小児生活習慣病対策検診について、各委員長から報告がありました。
最後に、今年度は「いま一度見直す学校健診」というテーマで研修会をおこないました。尼崎市は全校医制で、多くの先生方にご協力いただき校医をお願いしています。今回、開始から6年が過ぎた運動器検診を含めた内科領域の学校健診について見直し、新たに校医になっていただいた先生にもわかりやすく聞いて頂けたらと企画しました。
また当日は青木康夫先生に運動器検診、前野敏也先生に心臓検診、田中尚子先生に腎臓検診について解説をお願いしました。あらためて要点を簡単に示します。

〈定期健康診断について〉
学校健診は学校生活を送るにあたり支障がないか疾病や異常をスクリーニングするもので細かく専門的な診断を行うことまでは求められていない。
内科健康診断では、学校医は健診項目のうち眼科医、耳鼻咽喉科医、歯科医が実施するものを除くすべての項目を確認する必要があり、これには平成28年度から始まった運動器検診も含まれる。
学校は児童生徒と保護者に対し学校健診の目的と内容を正しく知らせ、正確な健診のために男女年齢を問わず上半身脱衣で実施することが原則であることを周知し理解を得る。
したがってプライバシーの保護は重要で、会場の設営準備には十分な配慮が必要である。

〈内科健診の実際〉
内科診察以外に、身長・体重の計測値により健康管理ソフトで作成された成長曲線から身長の伸びの異常や栄養状態のチェック(小児生活習慣病対策)をおこなう。さらに脊柱及び胸郭の疾病や異常を確認し、運動器検診をおこなう。

〈事後措置について〉
健診の結果に基づき、「健診結果のお知らせ」を発行し、必要な検査や治療を受けるよう医療機関への受診をうながす。また、より良い学校生活を送るためにその他の保健指導をおこなう。

次にそれぞれの対策委員長に解説をいただいた運動器検診、心臓検診、腎臓検診について要点を示します。

〈運動器検診〉
近年子どもの運動習慣は運動過多と運動不足の二極化が顕著となり、様々な課題が指摘されるようになり、平成28年から運動器検診が始まった。
運動器の保健調査票で保護者のチェックのある項目について、検診前に養護教諭が担任教諭らと連携して取りまとめた情報をもとに検診をおこなう。痛みや学業に支障のあるような疾病・異常等が疑われる場合は、整形外科専門医受診につなげる。(運動器①)

〈心臓検診〉
対象は小学1・4年生、中学1年生、高校1年生、と養護学校の相当年で一次検診(学校医の診察と心電図から心疾患専門委員による選定)→二次検診(ハーティ21での専門委員による診察・検査)→三次検診(AGMCまたは関西労災病院での精検)
また一次の心電図結果から三次検診へショートカットとなる場合がある(左室肥大、QT延長、多源性や頻発する心室性期外収縮、MobitzⅡ型やⅢ型の房室ブロック、左脚ブロックなど)。(心臓②)

〈腎臓検診〉
尼崎市での学校検尿の流れの説明として今年度より保護者に案内文(腎③)が配布される。2次検診で医療機関受診となった生徒が持参する4枚綴りの検査カードには既往歴・家族歴、出生歴・出生体重(低出生体重児に早期に腎機能低下がおこることがあるため)、現在の身長・体重(eGFR計算に必要)の記載漏れがないように、また尿蛋白陽性の場合は尿蛋白/尿クレアチニン比の計算をお願いします。暫定診断名と管理区分を必ず記載してください。
簡単ですが、以上が研修会の概要です。
これからもお忙しい中、定期健診やその他の学校医の職務でお世話をかけますが、尼崎の子どもたちのためによろしくお願いします。