「第14回 尼崎市民医療フォーラム開催」 (第623号令和3年11月1日)

「第14回 尼崎市民医療フォーラム開催」10・16

 
● 医政委員会 委員  金子 明弘

10月16日(土)午後2時から第14回尼崎市民医療フォーラムが開催されました。今回は、コロナ禍の中、初のYouTubeライブ配信という形で行われ、テーマは「100歳時代の生き方、死に方part3」~地域みんなの力で新型コロナに立ち向かえ~。好評を博した前々回、前回からのシリーズ第3弾でした。
総合司会・進行の横田芳郎理事が、軽快に司会を始めて下さりましたが、コレが初めてのYouTubeライブの落とし穴。マイクがonにならず、ほんのわずかな時間ではありましたが周囲にいるスタッフ間でしか盛り上がれない時間となってしまいました。
マイクがonになってからは順調に進行が進み、八田昌樹会長から開会のご挨拶をいただきました。会場へ足を運んでいただく市民の方と、YouTubeライブ配信によるハイブリッド方式での開催を目指したものの残念ながら叶わなかったことをご報告いただきました。また、新型コロナウイルス感染者の自宅療養者対応に有志の先生方が身を切って訪問診療に臨んでおられたことを市民の方へお伝えいただきました。
次に来賓の稲村和美尼崎市長にご挨拶をいただきました。カメラ目線でしっかりと尼崎市としてのコロナ対策を市民の方へわかりやすいメッセージでお伝えいただきました。最後に尼崎市でのコロナ対応などで、尼崎市医師会に感謝の念をお伝えいただき、フォーラム開始のドラを鳴らして下さりました。
はじめに、こちらも尼崎市民医療フォーラム恒例となりました、社会人落語の浪漫亭不良雲さんから快調な前説をいただきました。自己紹介から落ちまで全てが落語。特に病院内で繰り広げられる患者さんと主治医との掛け合いなど、私たちの日常生活をうまく表現し、思わず聞き入ってメモを取ることを忘れてしまうくらいのめり込んで笑わせていただきました。
今回の目玉である第1部では、「おはよう朝日です」のコメンテータとして人気を博した、現在日本医師会総合政策研究機構主任研究員の森井大一先生から、感染症専門医の立場から「我々はコロナにどう立ち向かってきたか」という題目でお話をしていただきました。
「おはよう朝日です」での視聴者へのわかりやすい説明をそのまま聞くことができ、新型コロナウイルス感染症に関する死亡率や、感染経路といった一般的な知識の確認から始まり、最後に結局感染対策は一人一人にかかっており、ハザードコントロール(周囲2mの問題)を主軸としたセルフマネジメントで効率良くといったメッセージが印象的でした。
第2部はシンポジウム方式となり、司会は内藤彰彦先生、中川純一理事のお二人で盛り上げていただき、シンポジストは中野洋昌衆議院議員、森井大一先生、郷司純子尼崎市医務監、松森良信先生、矢野雄飛先生に務めていただきました。
「第5波まで経験してきたコロナ禍で苦労したことは何ですか?」といったお題に対しては、郷司医務監が第3波を挙げられており、施設でクラスターが発生しても実際に施設での治療ができない。入院先の確保ができず、軽症者の自宅療養を県に依頼するところから始まったといった、生々しい当時の状況を詳細にご報告いただきました。病院側代表として、尼崎だいもつ病院の松森良信院長よりスタッフの健康管理やローテーション、防護講習などが非常に大変であったことを教えていただきました。また、診療所の代表として、矢野雄飛先生から、代わりの効かない院長の自分が感染したらという不安の中で、院長が感染したらどうするか、対応マニュアルまで作成されたというご苦労があり、医療従事者全員に訪れる恐怖につき、改めて考えさせられました。
「約100年前に起こったインフルエンザパンデミック(スペイン風邪)との違いは?」といったお題に対しては、森井先生から当時急速なグローバル化が進む中での世界で初めてのパンデミックであり、特にインフルエンザ感染後の細菌感染に対して抗菌薬が無かったことが、国内で45万人とも言われる高い患者死亡数に繋り、今回の新型コロナウイルス感染症とは状況が異なると教えていただきました。
「医療は社会的共通資本であるという考えのもと、今回の新型コロナウイルス感染症がもたらしたものは?」と言ったお題に対しては、どのシンポジストからも日本における国民皆保険が今回の有事に非常に役に立ったという内容のコメントをいただきました。
「コロナ禍で尼崎市保健所と尼崎市医師会はどのような取り組みや協力をしたのか?」といったお題に対しては、市民病院がない尼崎市であるからこそ医師会と保健所との連携がうまくいって、PCR 検査専用の臨時診療所の開設や市内全域における唾液によるPCR 検査の普及が進んだ経緯をご説明いただきました。特に郷司医務監からのお話で、今まで尼崎市の予防接種施行率が全国最下位であったが、新型コロナワクチンの予防接種に関しては上位に食い込んでいると聞き、尼崎市民の意識の変化に驚かされました。
最後に杉原加寿子副会長より閉会のご挨拶があり、新型コロナウイルスは、世代によって異なる障害を引き起こし、生活を奪ってしまったという状況の再確認が必要であること、そして本フォーラムのYouTube配信における瞬間最高視聴者数は124名であった事を報告され、現地参加した会員以外にも楽しんでいただけた非常に有意義なフォーラムであったことを実感させられました。

 
● 医政委員会 委員  佐藤 元彦

尼崎市民医療フォーラムといえば10数年前近藤病院にいた頃、黒田先生からぜひ参加するようにとMRを介して伝えられ、何回かアルカイックホール・オクトに行ったことを思い出します。その頃は盛況でたくさんの観衆がいた事とコメンテーターの勝谷氏の話が面白かったことを覚えています。今回コロナ禍のため1年ぶりに中小企業センターで開催されましたが、YouTube配信のため観衆はおらず、現場には医政委員会のメンバーなど医師会の人間が20人くらい、制作スタッフが5~6人、来賓が5人でした。昔と比べるとがらんとしていて裏方の一人として観ているようでした。
日本医師会総合政策研究機構主任研究員の森井先生のお話では、新型コロナウイルスの第1波は小さかったが死亡率は5・4%、感染者は20代に多く、死亡者は80歳以上に多かったこと。第5波は大きかったが、死亡率は0・3%であったとのことでした。また咳、くしゃみで飛沫は最大2m飛び、この飛沫に含まれているウイルスは最長72 時間生きている。この飛沫で汚染されたドアノブを手で触り、その手で自分の口や鼻を触ることによって感染が生じるという説明が個人的にはすごく分かりやすく感心しました。ハザードとリスクの話があり、ハザードはマスクもせずにコロナ陽性の人と会話するような危険性とリスクはマスクをして会話したり、マスクをして電車に乗って移動するなどの危険性をいう。
Hazzard based approachとRisk based approachに分けて考えるべきと話されていました。
特措法5条は最小限の制限を示すもので必要十分なものではない。それゆえ自身の判断で制限や対策をしないといけないものであると言われてました。
尼崎市医務監の郷司純子先生からは、第3波の時は1日に200人の新規感染者がでて困ったこと:そんなに発生していたとは知らず驚きました。現在は1日数人程度だそうです。年末年始は高齢者施設でクラスターが多発して入院待機になるなど大変で、施設内には往診が保険上出来ないので困ったとお話があり、保険でできない部分は尼崎市が補填する形で乗り切ったとのことでした。知らなかったとは言え、本当にご苦労様でした。

 
● 医政委員会 委員  木村 祐子

10月16日に行われた、第14回尼崎市民医療フォーラムに参加してきました。
当初は現地開催とYouTube配信併用でのハイブリッド開催の予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の感染状況を鑑み、この度はYouTubeでのWEB配信のみの開催となりました。YouTube配信に参加するというのが初めての経験でしたので、少しテンション高く、現地でスマホ片手にYouTube配信を見ながら参加してきました。
今まで医療フォーラムに参加したことがありませんでした。また、お恥ずかしながら、尼崎市医師会がこのように市民に向けたフォーラムを開催していることも、数年前まで知りませんでした。
今年のテーマは、昨年からのコロナ禍ですので、「新型コロナ感染症」についてでした。
基調講演とシンポジウムの2部構成で、今までのことや今の状況、そしてそこから何を得たのか、これから私たちは何にどう気をつけていけばいいのか…等、とても簡潔でわかりやすく、また楽しく聴講できるフォーラムでした。
ネット社会となり、携帯電話・スマホの普及でいろんな情報が簡単に手に入れられる時代となりました。玉石混淆と様々な情報が溢れる中、専門的な知識がなければ真偽の判断が難しく、いろんな情報にたくさんの人が振り回されることもあります。特にこのコロナ禍では、そのような状況が多くあったように思います。そんな中で、正しい情報を人々に知ってもらえるように努めていくこと、また伝えていくことの大切さを実感しました。正しい医療を提供するだけではなく、医療知識のある専門職として何を行っていくのか、改めて考えさせていただけたフォーラムでした。ありがとうございました。登壇された先生方、おつかれさまでした。ありがとうございました。