「尼崎市性教育講演会」 (第621号令和3年9月1日)

(報告)「尼崎市性教育講演会」

   ハイブリッド形式 (会場:尼崎市中央北生涯学習プラザ大ホール)

産婦人科医会 横田 光

 第14回尼崎市性教育講演会を7月15日(木)にハイブリッド形式で開催いたしました。分科医会レベルでのハイブリッドのイベントには思いがけない困難が多発しましたが、400名定員の大ホールに85名参集いただいて無事に終了することができました。
 2題のご講演があり、はじめは大阪市立阿武山学園特別講師のあかたちかこ先生による「児童自立支援施設で考える、性的同意と性教育」でした。
 「性的同意」とは性的な活動を行う時に結ぶ合意のことで、合意のない性交はもちろん犯罪ですが、たんに相手の体にタッチすることも場面によっては性的ですから、応用範囲は広くなります。
 まず「児童自立支援施設」からよく知らない言葉でしたが、行動や家庭環境に問題のある児童を入所または通所で指導したり自立を支援する福祉施設のことで、あかた先生曰く「少年院のジュニア」だそうです。先生はここで「恋愛相談」の名目で性教育指導をされていて、子供たちにとって困難が生じやすい他者とのコミュニケーションについて、性や恋愛という入りやすい窓口で教えていることになります。具体的なエピソードの多い、楽しい語りでしたが、性教育で一番の肝として教えたいことが「自分の身体は自分のもの、相手の身体は相手のもの」というまとめが強力でした。
 授業の性教育では望まない妊娠や感染症などリスクを回避することを多く教えがちなのですが、自尊心やハッピーなコミュニケーションを教えている人に触れて、明るい気分になりました。
 リモート講演でしたがその場でのやりとりにも丁寧に対応いただきました。
 次の泉佐野市・谷口病院の谷口武先生には直接会場でお話いただきました。「女性活躍支援からみたヘルスケア~10代にこそ知ってほしい元気に活躍する女性の体のこと」として、経済面での女性の存在の大きさについて、あるいは女性の健康上の問題がおよぼす生産性への影響につき経産省統計等に沿った解説と、実際に学んで働いて妊娠・出産・育児も経験する現代の女性にとって今後さらに重要となる月経と関連症状(生理痛など)のコントロールについて、10代での健康教育の中でピル等の具体的なことも含めて教えていくことが彼女たちを応援することにつながるという内容でした。
 講師の谷口先生は産婦人科医としてオールラウンドプレーヤーかつ役職も多く、大阪での学校性教育事業をとりまとめてもおられ、隣の大阪から何かヒントがもらえるかな、と思って聴き始めましたが、この国の若い人にもっと元気に頑張ってもらうために伝えられることは何か、という高い視点のお話でした。産婦人科医だとよく知っている内容も多く含まれていたのですが、参加者のアンケートでは働く女性として元気づけられる話だった、という意見もいただき、対象者の年齢にかかわらず日常臨床の中でも、もっと知らせるべきこと、と改めて気づかされました。
 2題ともに性教育の次の方向を明るく示していただきました。
 今回も共催の小児科医会からは田中尚子先生に開会のご挨拶を、山本千尋先生に司会をいただき、ご協力に感謝いたします。尼崎総合医療センターに籍を置くNPO法人「性暴力被害者支援センターひょうご」にも共催として運営のかなりの部分を担当いただきました。冒頭であげた困難の解決はほとんどここのスタッフのお力によるものです。
 そのほか関係各位のご協力にも紙面を借りて感謝いたします。ありがとうございました。