尼崎市医師会新型コロナワクチン集団接種 (第618号令和3年6月1日)

尼崎市医師会新型コロナワクチン集団接種

 
副会長 杉原 加寿子

 
新型コロナウイルス感染症の第3波が猛威を振るい、病床逼迫のために自宅や高齢者施設での入院待機を余儀なくされた高齢者のために尼崎市と尼崎市医師会が協力して入院待機陽性患者医療支援事業が構築されたのと時を同じくする頃、国では新型コロナウイルスワクチン優先接種についての接種体制のスキームが出来上がりました。この時点では、医療従事者向け優先接種の実施調整主体は都道府県、高齢者向け優先接種の実施調整主体は市町村ということで、1月21日に兵庫県から医療従事者の優先接種の希望者数の暫定調査が届きました。医療従事者優先接種のスキームとしては、基本型施設と連携型施設を設置し、基本型施設にディープフリーザーを配置して、その下に紐づけされた連携施設にファイザーのワクチンを供給し、医療従事者の接種体制を整備することが求められていました。
2月初めの時点で、尼崎市の医療従事者優先接種の暫定調査で上がってきた接種予定者数は15,483名、基本型・連携型施設での受け入れ可能人数は11,344名で、尼崎市の医療従事者優先接種では4,237名分が接種できずに宙に浮くことが判明しました。この中で医師会会員に関連する医療従事者は約4,500名であり、迅速にかつ確実に医療従事者優先接種を遂行するためにはどうしたらいいかということで尼崎市医師会新型コロナ感染症等特別委員会にて協議を重ね、医師会主催の集団接種を実施するしかないという結論に達しました。幸いなことに、約10年前にも新型インフルエンザワクチンの住民接種を高原執行部率いる尼崎市医師会で行ったことがあり、そのノウハウを用いて医師会会員の集団接種を行うことはすんなりと了承され、また開催場所についても尼崎健康医療財団看護専門学校を接種会場とすることが決まりました。
また、本来は都道府県が接種体制構築の中心的存在として、医療関係団体である医師会・歯科医師会・薬剤師会・病院団体や、市町村や国の機関等との調整をして接種を進めることが国の方針として挙げられており、兵庫県が、登録された医療従事者のワクチン接種券を発行し接種の予約システムを構築するということが決まっていました。しかし、結局のところ兵庫県の方針はいくら待っていてもなにも決定されず、早々に見切りをつけた形で尼崎市医師会は集団接種を決定したのです。その際には尼崎市保健所にも協力体制をお願いし、民間病院協会と共に尼崎市内の医療団体を取りまとめる形で、尼崎市歯科医師会・薬剤師会・訪問看護ステーション・救急隊などの消防署や保健所などの行政職員についても接種体制の構築を進めていくことになりました。
3月6日(土)、会員に向けてZOOM(ウェビナー)にて新型コロナウイルスワクチン接種に関する説明会を開催しました。集団接種の開始日は当初は3月下旬からとしており、約4,500人(9,000回)に対して土曜日・日曜日を使って6週連続で接種を行い、接種時間を1人当たり1分として接種体制を組むことを予定しておりました。しかし、ワクチンの供給が遅れたため4月25日(日)からの開始となりましたが、医療従事者接種であるということを前提に、予診については医療機関ごとに予め済ませて来ていただくこと、接種時間の短縮のため接種しやすい服装でお越しいただくことなど、ずいぶんと無理をお願いしたと思っております。本当にみなさまのご協力に感謝を申し上げます。
それとともに尼崎市内での医療従事者接種を完結するため、特別委員会の委員である尼崎中央病院の吉田理事長が民間病院をまとめてくださり、歯科医師会・薬剤師会・それぞれの医療団体の非会員の集団接種のプログラムを作成してくださったこと、救急隊などの消防署行政職員375名の接種は関西労災病院が担当してくださったこと、保健所職員と訪問看護ステーション515名の接種については尼崎市保健所が担当してくださったことなど、尼崎市医師会と尼崎市行政が協力体制を取りながら速やかに接種体制を構築していくことができました。
4月1日から稼働した接種予約システムについても、尼崎市医師会独自のものを事務局と吉田先生のご尽力により立ち上げました。そして、出務してくださる先生方や看護師の方々・薬剤師会の方々・保健所の方々の協力により、ご存知のように4月25日からの尼崎市医師会集団接種を開始することができたわけです。一方尼崎中央病院と民間病院が中心となって行われた歯科医師会・薬剤師会・非会員約2,700名に対する集団接種についても、小田北生涯学習プラザを会場として、4月22日より6月15日の毎週火曜・水曜・木曜の週3日で実施されています。このような形で、医療従事者についての接種が医師会会員のみではなく歯科医師会・薬剤師会・訪問看護ステーション・非会員に対しても広く行われているところは実のところ県下でも他にはあまりありません。
今は現在進行形で集団接種が行われている最中ですが、特に大きな副反応もなく、滞りなく接種が進んでいます。本当に多くの方々のご協力を得て、無事に集団接種を終えることができることを大変感謝しております。医師会会員の先生方、看護師の方々、保健所の方々、薬剤師会の方々、そして事務局の方々のご協力がなければ成しえなかったことだと思いますので、この場をお借りして八田執行部から深謝申し上げます。
これからは高齢者の住民接種が始まります。個別接種の予約等で大変な思いをしておられる医療機関も多いとは思いますが、新型コロナウイルス感染症に立ち向かうためにワクチンは最大の武器です。尼崎市医師会の総力を挙げて今後もワクチン接種にご協力をお願い申し上げます。