第4回尼崎市医師会医療安全研修会が開催されました (第616号令和3年4月1日)

第4回尼崎市医師会医療安全研修会が開催されました

 

医療安全担当理事 伊藤 進一

 

令和3年2月27日午後2時より尼崎市医師会主催「第4回医療安全研修会」を開催しましたのでご報告申し上げます。例年と異なり新型コロナの感染予防の為、WEB開催となりました。私どもの広報・準備の至らなさもあり医師会の先生方の登録参加は65名でしたが、WEBで講演会をご視聴いただきました方は150名を超えました。この紙面を借りまして御礼申し上げます。
研修会は3部構成にて行なわれ、第1部は朝田副会長による「放射線安全利用研修」、第2部は損保ジャパン川西智也様から「改正後の個人情報保険に関する法律で規定された委員会への報告・本人への通知義務化について」ご講演いただきました。そして第3部特別講演は、八田会長の後輩で近畿大学医学部附属病院安全管理部教授の辰巳陽一先生をお招きして「Googleから学ぶ-チーム医療を活かす心理的安全のこころ」との演題でご講演いただきました。辰巳先生は医療安全学会の学会長をなさり、今回のテーマの心理的安全性の理論をいち早く日本の医学会に提唱された医療安全界のスーパースターです。
「放射線安全利用研修」では法令で放射線撮影をされるクリニックでは①安全管理責任者の設置②安全管理指針の作成③安全利用の為の研修の実施④線量管理と線量記録を行う事が定められていて、朝田副会長からわかりやすく説明していただきました。②の管理指針は日本医師会がひな形を作成しており尼崎市医師会の会員ホームページに載せていますので参考にして作成下さい。④線量管理と線量記録では検査の必要性と被曝リスクについて説明し、カルテに記載(添付)する必要がございますのでご注意下さい。記録ではカルテに記載していれば改めて台帳を作成する必要はないとの事です。
「改正後の個人情報保険に関する法律」では今までは個人情報の漏洩はPC・USB等の紛失事例が大部分でしたが、近年医療機関をターゲットとしたサイバー攻撃の危険性が増加し、また漏洩が発生した場合は本人への通知が義務化され罰金も増額されたとの説明をいただきました。
特別講演「Googleから学ぶ-チーム医療を活かす心理的安全のこころ」について講演内容をご報告します。スライド原稿は辰巳先生のご厚意により尼崎市医師会ホームページから入手できますので、ご興味のある方はプリントアウトして下さい。「心理的安全性」とは2000年頃にハーバード大学のエドモンソンらが提唱した概念ですが、チームの中で「私、わからないんです」とか「教えて下さい」とか「それ間違っているじゃないですか」とコメントすると多くの場合、怒られたり馬鹿にされたり軽んじられたりするけれど、「私のクリニックではそんな事はない」という概念をチームメンバーの全員が持っていると生産性が爆発的に上がる事がわかりました。「心理的安全」の意味を組織のリーダーである先生方にご理解いただければ、ご自身の組織を変えることができる事を理解していただきたく思います。医療安全の基本は、医療の質と患者安全です。安全な医療を行なうには双方の対策が必要ですが、質の良い医療を行なえば事故は減りますが、残念ながらどんな名医でも事故を起こしますしトラブルを起こします。その時に具体的にうまく対応できる対策を立てるのが医療安全の仕事です。この事故、失敗を止めるのに有効な手段の一つが心理的安全性です。心理的安全性(Psychological Safety)とは、「チームではメンバーが発言しても恥じたり、拒絶したりせず、仮に間違えても罰を受けるようなことがないという確信をもっている状態」「チームでは、対人関係が損なわれる危険があっても、懸念を述べることで責められることはないという認識がメンバー間で共有された状態」「このような組織では、フォロワーが活発に発言し〝私はこう考える〟〝自分はこうしたい〟というアイディアを具申できる組織ほどイノベーションが生まれやすい」「互いに推し量る力=社会的感受性が重要」といわれています。この心理的安全性の概念が一躍世に出たのは、Googleが350万ドルと約4年の歳月をかけて生産性のよいチームとは何かを調査してその結果をニューヨークポストに発表しました。それが「心理的安全性」でした。機能不全のチームは「チームの信頼の欠如」している為「争いを恐れ」「献身性が欠如」してメンバーは「責任回避」の事ばかり考えて「結果に注目しない」ことになります。それが優れたチーム即ち心理的安全性のあるチームでは「チームの相互の信頼」がありその為「争いを恐れない」それは「高い献身性」を生み「責任感」が出て「結果に注目し生産性が高くなる」わけです。しかし勘違いしないでいただきたいのは、心理的安全性は「仲良しグループ」ではなく「結束性が固い」わけでもありません。この概念はどの分野でも役に立ちます。診療所といえどもチーム医療です。多くの患者に安全な医療と信頼され来院いただくには、リーダーである先生方のチームに「心理的安全性」を保つようにしていただきたく思います。先生方の職場が心理的に安全かテストを載せておきますので受けて自己採点をしてみてください。採点が低かった先生は、辰巳先生のスライドをご覧頂き、これからの日々の安全な診療の糧にしていただければ幸甚です。
尼崎市医師会主催の医療安全研修会は今後も続けていく所存です。次回はより多くの先生、看護師、事務の皆様にご参加いただけるよう、出来ればハイブリッド(会場+WEB)開催を企画できればと考えております事を申し付け加えまして医療安全研修会の報告を終わります。