尼崎市民医療フォーラム(第599号令和元年11月1日)

第13回 尼崎市民医療フォーラムレポート
10・5
医政委員会副委員長 内藤 彰彦
第13回尼崎市民医療フォーラムが令和元年10月5日(土)にあましんアルカイックホール・オクトにて開催されましたので報告させていただきます。
今までの医療フォーラムはコメンテーターの勝谷誠彦さんが第1回からご出席いただき、フォーラムには欠かせない存在となっていました。しかし昨年お亡くなりになり、勝谷誠彦さんなしでの初の医療フォーラムとなりました。今年は『100歳時代の生き方、死に方 Part2〜健康でイキイキ、令和はえ〜わ!〜』というテーマで、昨年同様開演時には市民の方々でホールはほぼ満員となっていました。まず開会に際して東会長の開会挨拶、稲村市長より来賓挨拶をいただきました。そして、はじめにとして今年は社会人落語家の浪漫亭不良雲(ろまんてい ぶらうん)さんより小噺を披露いただきました。浪漫亭不良雲さんは、ここ、尼崎市立総合文化センターで行われた新人お笑い尼崎大賞にて2015年に優秀賞・2017年には大賞を獲られており、尼崎にとてもご縁のある落語家さんです。小噺の中では、10月から開始された消費税増税の話から簡単な小噺、お医者さんネタの小噺などで会場をなごませてくださいました。
会場の雰囲気がほぐれたところで、第一部の始まりとなりました。今年は兵庫県立尼崎小田高校 看護医療・健康類型 の生徒さん達をお迎えし、演劇を披露していただきました。演劇のタイトルは「しあわせのカタチは十人十色 仕事と介護の両立 かかりつけ医って正義の味方」です。あらすじは、『ある日、働き盛りのわかな(55歳)の母、あまみ(80歳)が自宅で転倒し救急搬送される。手術、リハビリ治療をするが身の回りのことが一人でできるか不安な状況になる。そんなある日、過労と心労が溜まったわかなが狭心症を発症し、治療を受ける。今後、母あまみをどうするか?わかな自身はどうするのか?』という内容でした。そして劇を通じて「全世代型社会保障」「かかりつけ医の存在」「医療連携の大切さ」などを生徒さん達に演じていただきました。演劇のシナリオは矢野委員長が担当し、セリフや詳細は生徒さん達が自分達で考えてアレンジしたそうです。
第二部のシンポジウムでは泉房穂氏(明石市市長)、中野洋昌氏(衆議院議員)、福田秀志氏(尼崎小田高校主幹教諭)、二宮園美氏(尼崎市認知症初期集中支援チームチームリーダー)、美崎晋氏(アイワ病院院長)矢野雄飛氏(やの内科・胃腸クリニック院長)を迎え第一部の演劇にでてきた問題などに対し、意見交換が行われました。
シンポジウムの前に泉市長のご紹介をかねて、お話がありました。泉市長は昨年職員へのパワハラ発言などで話題の人ということもありましたが、今回の全世代型社会保障の一つ、子育て世代の政策に力を入れている市政を改革する熱い心の持ち主だということで出演交渉をして今回ご出席いただくことができました。出演時の泉市長は白髪混じりであり、勝谷誠彦さんの面影がありました。そして、明石市の子供食堂がみんな食堂に変わっている事を例に取り、子育て世代だけではなく、高齢者、障害者にもやさしい町づくりを心がけていると熱く語っておられました。
さてシンポジウムでは中川純一理事と私による司会進行の元、「演劇の感想、ご苦労」「全世代型社会保障」などについて意見交換が行われました。
まず最初に「ずばり令和はえーわですかね?」という問いがありました、矢野先生、美崎先生、福田先生、二宮さんには自己紹介もかねてご解答いただきました。誰でもわけへだてなく医療が受けられるようになっている。元気な高齢者が増え、手術を受けられるようになっている。教育も自分達で考えていかないといけない時代になっている。認知症の人に対しても街がやさしくなってきた。など、令和は良い時代という意見が多数をしめました。
2つ目の質問では、シナリオを作成していただいた矢野先生に演劇を観ての感想をうかがいました。演劇に対しては大変素晴らしく、忙しい中練習してくれた生さん徒達に感謝を述べられてました。また、演劇で起こった出来事は将来誰にでも起こりうる事だとして、是非ご家庭で話し合ってほしいと言っていました。次に福田先生には演劇指導のご苦労についてうかがいました。夏休み返上で劇の練習指導を行い大変だったが今はホッとしている。今回はハッピーエンドのシナリオであったが、実際はすべてがハッピーエンドだけではない。多面的多角的に考える力が生徒さん達に求められると言っておられました。
3つ目の質問では二宮さんに認知症初期集中支援チーム現場でのご苦労をうかがいました。尼崎では、認知症は近所の人からの報告が多く、本人の自覚があまりないようです。また、一人暮らしでご家族がいるが、ご家族の協力を得られない事が多いことで困っているようです。このような事がおこらないように、5年後10年後の事をご自身で今から考えてほしいと強調しておられました。次に病院からの立場として美崎先生に支援整備についてうかがいました。アイワ病院のような病院では老老介護の夫婦がいる場合、本人の入院が必要な場合、相手も一時的に入院させる事が可能であったり、在宅医療患者の病状変化があった場合に一時入院(レスパイト入院)する事ができるように在宅医と連携していると説明していました。
4つ目の質問は「全世代型社会保障」について。中野議員には、消費税増税2%分の使い道を行政の立場から説明してくださいました。子育て支援(3歳から5歳の幼児教育無償化・低所得者の私立高校無償化・大学の給付型奨学金など)・低年金の世代への給付金補助・介護保険料軽減・年金受給を遅らせ働くことにより給付額の増加などを行い、少子高齢社会においてみんなが元気に過ごせるようにする仕組み作りをしていくと話をされました。泉市長には子育て支援を実践されている市長の立場からの「全世代型社会保障」実現の知恵を教えていただきました。市長は「全世代型社会保障」という難しい言葉は使わず、「みんなでみんなを地域でささえあう」と言葉を用いました。明石市のこども食堂が60歳70歳の元気な高齢者がボランティアをしている事を例にとり、子供やお年寄りや障害を持った人すべての人を地域のみんなで一緒にささえあう事が大事だ。とおっしゃいました。
最後に「100歳時代(少子高齢化)を乗り切るには?」という質問を美崎先生、矢野先生にうかがいました。美崎先生は、なんでも相談できる地域づくり、もしもの時にどうしてほしいか(人生会議)を家族や病院の先生に伝えていきましょうとおっしゃいました。矢野先生は是非かかりつけ医をもってちょっとした事でも相談してほしい。100歳時代とは100歳まで生きないといけないというわけではない、1日1日一生懸命に生きることで人生よかったなと思えるだろうとおっしゃっていました。
終わり際の一言で泉市長は、「改めて尼崎いいですね、たくさんの観客、気さくな医師、看護師がいて、学校の先生、高校生も一緒、力のある政治家(中野議員)もおられる。でも私は明石の市長、尼崎に負けないよう『住みやすい街ナンバー1』共に競い合いましょう!」と勝谷誠彦さんのように締めくくってくださり、第二部のシンポジウムは終了しました。最後に八田副会長の挨拶の後、演劇をしてくださった小田高校の生徒さん達も壇上にあがり、満席となった会場からは大きな拍手が起こりフォーラムは閉会となりました。第13回の市民医療フォーラムに参加された市民の方々だけでなく、私たち医療者にとってもわかりやすく、ためになる内容でした。来年度も多くの市民の方々と、会員の皆様の参加を是非お待ちしております。