目の愛護デー(第599号令和元年11月1日)

第31回 目の愛護デー記念健康講座
10・5
眼科医会 鈴木  温
残暑の厳しい10月5日、標記の会がイカリライクスホールで開催されました。126名もの市民の方が参加され、兵庫県立尼崎総合医療センター眼科部長 竹谷太先生に『白内障のお話し』を講演していただきました。
最初に尼崎市市長 稲村和美様からのメッセージを健康増進課長 堀池香様に届けていただき、尼崎市眼科医会会長 満田久年先生のご挨拶で会が始まりました。
竹谷先生のご講演は、基本的な眼球の解剖図から始まり、80歳以上では70〜80%の方が中等度以上に進行しているとされる老人性白内障についてその危険因子や予防法、手術治療について主にお話をされました。白内障の危険因子としては、喫煙、紫外線、ステロイド薬、糖尿病、抗精神病薬などがあり、その予防薬としては点眼薬が主に用いられていますが、その他の予防法として注目されるサプリメントのお話しもされました。抗酸化作用のあるサプリメントをとることで老化を予防しようというものです。その種類には、ビタミンC、ビタミンE、β-カロテンなどがありますが、文献的にはサプリメントで白内障の進行を遅らせたり止めたりする明らかな証拠はないそうです。ただ、白内障ではサプリメントの効果は期待できないようですが、加齢黄斑変性症では効果があるようです。加齢黄斑変性症は、網膜の中心部である黄斑に異常な老化現象(委縮または脈絡膜新生血管)が起こり視力が低下する疾患ですが、天然色素の一種でホウレン草やケールに多く含まれるルテインやゼアキサンチン、イワシ・アジなどの青魚に多く含まれるEPAやDHAのオメガ3脂肪酸で黄斑変性症のリスクは軽減されるそうです。話を白内障に戻されて、手術について歴史や現在最も一般的な超音波乳化吸引術については、手順に沿って実際の写真を用いて丁寧にご説明になり、通常20分程度で終わるとされる手術時間以上にかかっているかと感じたくらいでした。術後合併症についてもお話しになり、またそれを予防するための点眼薬、さらには点眼の仕方などもお示しになり、最後には尼崎総合医療センター手術室を含めた手術の流れに沿った一連の写真もお示しになり、これから手術を受ける市民の方々には非常にわかりやすく安心できるご講演であったと思います。
閉会のご挨拶は伊丹市眼科医会の藤原舞子先生がされました。竹谷先生のご講演で重篤な合併症の話が出たのをうけて、我々眼科医は合併症のリスクも承知の上でそれを最小限に抑える努力もしていますので、必要以上に怖がらずに手術を受けていただきたいとお話しされ、今年度の健康講座は閉会となりました。