あなたのカラダにいいことデイ(第599号令和元年11月1日)

あなたのカラダにいいことデイ 講演健康フェア(講演会2、4)
令和元年10月6日(日)於:尼崎市立中央北生涯学習プラザ
公衆衛生担当理事 髙橋 洋二

講演2
座長 公衆衛生委員会 委員長
山前 浩一郎先生

「禁煙治療について当院での取り組みもふまえて」
兵庫県立尼崎総合医療センター 呼吸器内科医長
嶋田 雅俊先生
1)タバコと健康の関係:タバコ煙の成分は4000種類以上の化学物質と60種類の発ガン物質です。平成29年の喫煙率は男性30%、女性7%と依然、高いです。タバコと関連するガンは咽頭、肺、食道など、慢性疾患は大動脈瘤などがあります。喫煙と呼吸器疾患は肺癌、慢性閉塞性肺疾患(=COPD肺気腫、慢性気管支炎)、気管支喘息、間質性肺炎などが挙げられます。肺癌ではやはり早期発見・早期治療が基本になります。COPDはタバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することで生じた炎症性疾患、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病と定義され、まさに今回の健康フェアのテーマそのものです。40歳以上で喫煙者、しつこく続く咳・痰が出る、階段を昇ると息切れがする、といった症状が典型的です。COPDの予後はよくなく死亡者数は年々増加しています。日本では受動喫煙が原因で年間1万5千人が死亡という報告、改正健康増進法の基本的考え方は1、望まない受動喫煙をなくす2、受動喫煙による健康影響が大きい子ども、患者等に特に配慮3、施設の類型・場所ごとに対策を実施=禁煙タイムのみは不可です。最近では喫煙者不採用の企業も増加しています。尼崎市たばこ対策推進条例:❶公共の場所でみんながきもちよく過ごせるように。❷吸う人も吸わない人もおたがいのことを考えましょう。❸できれば禁煙しましょう。応援します。❹吸わない人に吸わせない。❺吸ってはいけない未成年。絶対にさそわない。❻吸ってはいけない場所が尼崎市内にできました。❼歩きタバコは全面禁止。❽ポイ捨ては全面禁止。喫煙所や携帯灰皿を利用しましょう。また、喫煙後の口臭の有害なガス状物質、呼気タバコ臭いが元に戻るまでに45分必要という三次喫煙も注目されています。喫煙と経済学では、喫煙は貧困を助長する=タバコ代、医療費、教育費がかさむ。仕事の効率が低下し収入が低い。労働年数が短く平均寿命が短い。貧困層で喫煙率が高い。喫煙は親から子へ、子から孫へ引き継がれていく=家庭内での喫煙を子供が真似る。早い時期からの喫煙は止めるのが困難となる。国民全体の財政からみるとマイナスとなる=国力(国民の健康、能力)、財政の低下が指摘されています。
2)新型タバコ:電子タバコにもニコチンが含まれるものがありますが、日本で売っているものはニコチン非含有(しかし、海外から個人輸入できる)。加熱式タバコ(iQOS)はニコチンありです。日本禁煙学会の見解:①紙巻きタバコと同様にニコチンが含まれる。呼気にもニコチンが含まれ、受動喫煙による急性心筋梗塞などのリスクがある。②紙巻きタバコと同様に種々の発がん性物質が含まれる。肺がん・口腔がん・胃がん・腎臓がんなどのリスクがある。③紙巻きタバコと違い、発生する有害物質が見えにくい。周囲の人々は受動喫煙を避けられず、かえって危険である。兵庫県では平成25年4月から「受動喫煙の防止等に関する条例」を施行しています。
3)当院での取り組み:毎週木曜日午後に禁煙外来を行っております。禁煙外来では禁煙がスムーズにできるようにお手伝いします!その内容は医師または医療関係者によるカウンセリングは患者が独自に行った場合に比べて禁煙率を有意に高める。短時間(3分間)の禁煙を促すカウンセリングでも5-10%の禁煙率が得られる。ニコチン代替療法はバレニクリンなどによる薬物療法と同様に長期間の禁煙率を確実に増加させ、プラセボに比べて有意に効果が高い。当院の成績では禁煙成功率は50%前後もドロップアウトする方が毎年20数名おられるので、治療を最後まで続けられた時の成功率はもっと高いものと考えられます。いかに治療を続けられるかどうかが今後の課題です。禁煙外来を終えての感想は、出費が減った、車内の嫌な臭いがなくなった、食事が美味しい、息がしやすい、体調・金銭的にいいことしかない、気持ちが落ち着いたように思う、タバコのことを常に考える必要がなくなった、喫煙場所を探さずにすむ、家族に迷惑をかけずにすむ、一人ではできなかった、があります。毎月22日は禁煙の日=寄り添う2羽の白鳥は喫煙者と周囲の禁煙協力者がともに禁煙に取り組む姿を現しています(白鳥はスワンなのでスワンスワン!)また、禁煙外来では卒煙のすすめ!としてタバコを禁じるのではなくタバコを「卒業」することと考えています。
会場からの質問:尼崎市では「歩きタバコ禁止」は一部の場所だけだったのでしょうか?確か、市内全域であったと思ったのですが?(たまたま、会場に来訪の)稲村市長さんが解答:おっしゃる通り、「歩きタバコ」は市内全域で禁止です。今後、市内全域での「歩きタバコ」禁止を周知します!(市長さん、歯切れの良い御発言、御解答をありがとうございました)。

講演4「生活習慣病」
座長 公衆衛生委員会 副委員長
長谷川 吉昭先生

①「生活習慣病について」
ゆうこクリニック 院長
木村 祐子先生
生活習慣病とは食生活、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関する症候群のことで頻度が高いのは高血圧、糖尿病、高脂血症です。これらは自覚症状がほとんどありませんが、放置したままや、疾患が重なると合併症の危険性が増すので生活習慣病になることは良くありません。高血圧は脳・心臓・腎臓の血管を傷めて重大な障害を生じます。糖尿病は太い血管の障害(脳梗塞・心筋梗塞)、細い血管の障害(神経障害・腎症・網膜症)の合併症を引き起こします。高脂血症では動脈硬化が進み心筋梗塞・脳梗塞の危険性が高まります。高血圧では塩分の取り過ぎに注意、糖尿病では腹七分目、食品の種類を多く、脂ものは控えめ、1日3食摂るように。高脂血症でも脂もの=動物性脂肪=飽和脂肪酸(肉の脂身、ラード、バターなど)を控えることですが、どの疾患も、食事療法と運動療法による生活習慣の是正の次に薬物療法が基本です。運動療法のポイントは隣の人としゃべれる程度の運動をすることです。100キロカロリー消費する運動と時間(体重60㎏)は軽い散歩なら=30分、ウォーキングで=25分、自転車=20分、ジョギング=10分です。ちなみにケーキ1個=300キロカロリー!ジョギングなら30分は頑張らないとカロリー消費ができないことになります。要介護になる一歩手前で身体的・精神的・社会的に虚弱な状態をフレイルと言います。フレイル・サイクルは食欲がない→低栄養→筋力低下(サルコペニア)→動けない・動かない→食欲がない・・・の悪循環のことです。一方、平均寿命と健康寿命の差は日常生活に制限のある時間と考えられ、男性8歳、女性12歳あります。このような状況にならないように、しっかり食べてしっかり運動(ただし食べ過ぎにはご注意を)しましょう。

②「アナタの知らない薬の世界〜生活習慣病編〜」
尼崎市薬剤師会 副会長
原田 祥司先生
皆様は何軒かの先生を受診し、実は同じお薬を何種類も飲んでいませんか?同じ成分の医薬品が重複している場合をポリファーマシーと言い、「必要以上の医薬品を服用している状態」です。このポリファーマシーを防ぐには、かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師に相談しお薬手帳を活用しましょう。医師や薬剤師がお薬手帳を見てお薬の重複や飲み合わせを確認します。さらにお薬手帳は1冊にしましょう。お薬手帳が何冊もあると見落とす、お薬がでてきます。また、大震災の時はお薬手帳でお薬がもらえることがあります。薬剤師さんに「血圧が下がったら薬は飲まなくていいですか?」という質問があります。その時には「お薬を飲んでいるから血圧が下がっているのです」「血圧の薬をきちんと服用しなかったら、心筋梗塞・脳梗塞・脳出血を引き起こすことになりかねません」と説明しています。糖尿病の薬は70種類以上、それに後発品が加わります。糖尿病では「低血糖」に注意。初期は動悸、冷や汗、不安感など、病状が進むとめまい、脱力感、さらに意識消失、けいれんを生じることもあります。低血糖になったらブドウ糖5〜10g摂取してください。ブドウ糖がなければポカリスエット、コーラ、ファンタ等を飲みましょう。お薬によっては角砂糖やアメでも大丈夫です。風邪をひいたりして食事が摂れない状態をシックデイといいます。シックデイの時に普段通りにインシュリン注射やお薬を服用すると低血糖の可能性があります。シックデイの際のお薬の飲み方は主治医の先生に確認しておきましょう。

③「生活習慣病を悪化させない口腔内衛生」
兵庫医科大学歯科口腔外科 主任教授
岸本 裕充先生
口腔の健康は寝たきりの予防に大変、重要です。口から食べるにはしっかり噛めることが必要です。噛めることで脳血流は増加します。重い物を持ち上げる時に歯をくいしばる、歯が揃っていないとしっかりくいしばれずバランスを崩してしまいます。歯がよくないといろいろな物を食べることができず栄養に影響します。80歳で20本の歯を残しましょう、というのが8020運動です。歯周病は歯周病菌が歯茎(歯肉)に炎症を起こし、慢性炎症となると血管から様々なところに菌が運ばれ影響を及ぼしています。
例えば歯周病をもつお母さんは早産が多いことがわかっています。昭和62年に65〜69歳で残っている歯は12本でしたが、平成28年には21本に増えています。歯を良くする対策の効果は少しずつですが出てきています。むし歯は歯に穴が空いてくる病気、歯が痛いのは知覚過敏で冷水や甘い物がしみるのでズキズキ、温水の方が痛みます。一方、歯周病は歯の周りの炎症で歯が溶けていく病気、歯が浮く、噛むと痛い、歯肉を押すと痛い・腫れ・排膿します。このようにむし歯と歯周病の〝歯が痛い〟痛みの種類が違います。むし歯に抗生物質は効きませんが歯周病には効果があります。歯を抜いたのに〝歯が痛い〟ことは根尖性歯周炎や歯肉炎に辺縁性歯周炎を合併している時です。歯周病は慢性炎症の原因となり、血管に悪影響をもたらすことがあります。歯は残したいですが健康な状態の歯を残しましょう。状態の良くない歯は抜く方がいい時もあり、義歯で補うことも大切です。是非、かかりつけ歯科をおもちください。嚥下の際、下顎が舌骨を拳上し喉頭蓋が倒れ込む、物を飲み込む時には必ず奥歯を噛んで飲み込んでいます(口を開けては飲み込めない!)。歯が抜けている状態や、噛み合せがよくないと食べ損ない、飲み損ないが生じ誤嚥します(この時の誤嚥の動画で会場はザワツキました)。むし歯予防には毎食後(すぐでも大丈夫)の歯磨き、うがいだけでも効果はあります。歯周病予防=1日1回でも先の細い歯ブラシ、フロス、歯間ブラシで歯周ポケットの入り口を掃除しましょう。

今回、新たな試みとして市民まつりと適塩化フォーラムに禁煙フォーラムと糖尿病フォーラム(今回は生活習慣病として開催)を加えた、講演健康フェア講演が行われました。施設は新しくきれいでしたが、残念ながら午前中の来場者が少し少な目でした。市役所のまつりとフォーラム開催時間の検討など、今後の課題と考えられました。
め市民の方々に、より多くの情報と自覚症状のない時期の未病への対応のきっかけづくりが必要であり、多職種が連携して多面的に健康を考えることができるこのような活動が継続的に行われることが必要だと改めて感じました。