市長への要望書提出 (第584号平成30年8月1日)

市長への要望書提出
7・25
副会長 児玉  岳
7月25日(木)、東文造会長及び児玉・八田・杉原3副会長と事務局2名にて尼崎市役所を訪れ、市長室にて要望書を提出いたしました。

13時半、市長室に稲村和美市長以下、森山副市長、郷司医務監、行政の方々が参集されました。そして推薦市会議員のお二人(真鍋修司市議と岸田光弘市議)の陪席のもと、東会長が尼崎市医師会からの要望書を市長に交付され、市側はそれを受領されました。
そして、同じく東会長が、要望書のそれぞれの項目につき概略を約30分説明されました。
また続いて、議長室を訪れ、市議会議長および副議長にも要望書を簡略に説明しました。

(出席者)
稲村 和美 市長
森山 敏夫 副市長
郷司 純子 医務監・保健所長
足田 剛志 健康福祉局長
新家 謙和 健康福祉局保健部長
作野 靖史 こども青少年本部事務局長
安福  章 秘書室部長
真鍋 修司 市議会議員(公明党)
岸田 光広 市議会議員(あまがさき志誠の会)

東  文造 会長
児玉  岳 副会長
八田 昌樹 副会長
杉原加寿子 副会長
芝林  昇 事務局長
平成30年度 一般社団法人 尼崎市医師会要望書
前文
平素、尼崎市医師会に対しご理解、ご協力、ご支援を賜っていることに対しましてお礼を申し上げます。

団塊の世代が後期高齢者になるいわゆる2025年問題に向けて、尼崎市に於いても今年の4月から、地域包括ケアシステムが正式に稼働されました。市民の方がいつまでも住み慣れた町で尊厳を保ち、健康で安心して暮らせるように、尼崎市の委託により尼崎市医師会内に尼崎市医療・介護連携支援センター(あまつなぎ)を今年の1月に開設し、現在活発に活動しております。今年3月に厚生労働省から「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(改訂版)が公表され、医師会としてはそれを1歩進めるために、一般市民と共にACPを考え、実践する多職種共同事業の開催を要望します。
また、休日夜間急病診療所の運営は、指定管理者制度により尼崎市医師会が運営を引き受けることが決まっておりますが、急病診の老朽化、耐震性、狭隘化のため、以前から早期の建て替えを要望しておりました。市の建て替え案では、建物規模(床面積)は900㎡を提案されておられますが、この広さでは新型感染症のパンデミックの場合の導線確保は難しく、また災害時救護所の拠点として考えるなら、明らかに建物面積は不足しています。もしこのままの広さで行くとするなら、緊急事の際には、市役所、公園、近隣の学校を含めた複合体の施設の一部として捉え、それをすぐに展開できるシステムも同時に作って頂きたいと思います。
認知症対策や出産後の妊婦のメンタルヘルスに対する対策、「保健福祉センター」や「こどもの育ち支援センター」の運営に関して、また受動喫煙防止、歩きたばこ対策などや、「尼崎市適塩化フォーラム」等の市民啓発活動でも、尼崎市と尼崎市医師会が協働し実行していく必要があることは、昨年と同様と認識しております。
上述以外にも、認知症対策、産婦人科対策、予防接種(感染症対策)、乳幼児保健や、学校保健、スポーツ活動についてや、がん検診について、など、今年も数多くの要望を出しています。いずれも、費用のかかることであり、市の財政については存じ上げ理解はしておりますけれども、医師会としては、あくまでも市民の方が健康で安心して暮らせる社会を望んでおり、また人口流出を防ぐためにも、さらに尼崎市が掲げている”ひと咲き、まち咲き、あまがさき”の4つの将来像の2番目の”健康、安全・安心を実感できるまち”を実現させるためにも、各要望に対しご理解とご対応をお願い申し上げます。

〈要望事項〉(平成30年度)
1.『尼崎市の医療・介護の職能団体が一体となり、一般市民と共にACPを考え、実践する多職種共同事業』の提案
尼崎市では、独居高齢者、中等度~高度の要介護高齢者、心不全などの重症患者のさらなる増加が見込まれ、死亡者は2025年に現在の約1.3倍に達すると予想される。
限られた医療・介護資源を、本人が望む適切かつ最善な形で提供するためには、本人に関わる家族、医療・介護の担当者を含む全ての関係者の理解と協力が不可欠である。
今年3月に厚生労働省から「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(改訂版)が公表され、日本医師会からは「終末期医療 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)から考える」が全医師会員に配布された。尼崎市医師会は、市民の身近な「かかりつけ医」として、尼崎市における地域包括ケアを適切かつ効率的に推進するために、松戸市と松戸市医師会によるモデル共同事業『松戸市ふくろうプロジェクト』等を参考にした、『尼崎市の医療・介護の職能団体が一体となり、一般市民と共にACPを考え、実践する多職種共同事業』を提案するので検討を要望する。

2.認知症対策について
(1)市民の認知症に対する理解を更に深めるため「認知症および認知症疑い患者さん対応マニュアル」「尼崎市認知症あんしんガイド」の市民への周知を行政が今以上に取り組む事。

(2)認知症予防に関する他市での取り組み(認知症予防教室など)を市と医師会とで検討し、今後、導入できるものを新たに認知症施策に追加する事。

(3)医師会内に「認知症サポート医連絡協議会」が、2018年6月に発足した。行政がおこなう認知症に対する正しい知識の啓蒙活動、予防活動、認知症患者や家族を支援する活動に、市内の認知症サポート医を活用して欲しい。

3.救急医療・災害時医療の対応について
(1)建設を予定している休日夜間急病診療所の建物規模
昨年9月から12月にかけて尼崎市から急病診の建て替えについて提案があったが、その建物規模(床面積)は900㎡を提案している。
これまでの受診者数からすれば、内科、小児科、耳鼻咽喉科、眼科の4つの診察室に加え、繁忙期用の予備の診察室も確保できる面積である。
しかし、近年発生が予測されているパンデミック時には、この面積では充分な広さの待合室を確保できず、患者数が急増した際に導線確保が困難である。
また、災害発生時に尼崎市は市民病院を持たないため、休日夜間急病診療所は救護所の拠点として、及びDMAT、JMATなど救護チームの参集拠点として最適である。しかし、災害時のトリアージエリア造設や救護チームの隊員を受け入れるためには建物面積が不足している。
床面積を拡大するためには、休日夜間急病診療所を2階建てとして、スタッフの控え室や、更衣室、薬品や備品倉庫を2階に上げるなどの工夫が必要である。
近年建設された1次救急医療施設を参考として、敷地面積を再検討願いたい。

(2)災害時における医療業務協定
(災害時の医療業務実施中の2次災害の補償について)
尼崎市と尼崎市医師会との間で、災害時における医療業務協定が結ばれている。その協定書によれば、災害時に尼崎市の要請に基づいて、又は自ら医療業務を実施することとなっている。
この協定書の第7条(災害補償)には、医療救護活動中の2次災害の補償として『医療業務により生じた死傷等の災害に対する補償については、その都度尼崎市、医師会が協議して定めるものとする』と記載されているが、事前に具体的な補償内容を定めておくよう要望する。
また、『死傷等』に含まれる傷病の範囲も明確に示して頂きたい。

4.産婦人科対策について
(1)産婦健康診査事業の整備
共働き夫婦の増加・核家族化などにより女性の育児負担が増加し、妊娠中・産後に精神的・肉体的疲労に陥る女性は年々増加している。そこで国も平成29年度より産後うつの予防や新生児への虐待予防等を図る観点から、産後2週間および1か月などの産婦に対する健康診査に公的助成が開始され、当会も昨年その助成を要望した。それに対して「産後ケア事業と合わせて実施することを条件としているので産後検診の助成事業は行っていない」との回答を頂いた。しかしその見解はおかしいと思う。その根拠は平成29年3月31日厚生労働省より通知された「産婦健康診査事業の実施に当たっての留意事項について」(雇児母発0331第1号)にある。その内容は実施医療機関並びに市町村への周知事項であるが、市町村へは(1)健診結果が把握・管理されること(2)あらかじめ実施機関、精神科医療機関及び福祉医療機関との連携体制を構築(3)支援が必要と判断される場合には、受診者への電話連絡、訪問等により速やかに実情を把握する、の3点が要件となっている。すなわちこの産婦健康診査事業での産後ケア事業は、宿泊型・アウトリーチ型・デイサービス型などの産後ケア事業を要件としていない。産後ケア事業を整備できていない市町村でも平成29年度途中そして平成30年度より産後2週間及び1か月の産婦健康診査事業助成が開始されている。
尼崎は隣接の兵庫医科大学に周産期精神科医師が基幹病院となり対応していただいており、当市の医療機関の多くが産後2週間健診を行っている。そして産後健診に従事する助産師の多くが妊産婦メンタルヘルスの勉強を行っている。また昨年度は当会医師と尼崎市の保健師との間で妊産婦のメンタルヘルスの勉強会も行ってきた。以上より尼崎市は産婦健康診査事業の整備する要件は満たしており、尼崎市民のため産後2週間及び1か月の健診の公的助成整備を要望する。

(2)子宮頸がん検診へのHPV検査併用
子宮頸がんの原因が高リスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染であることが明らかになったことから、近年高リスク型HPVの子宮頚部への感染が検出できるHPV-DNA検査(HPV検査)が開発されて一部保険適応にもなっている。従来の子宮頚がん検診は、細胞の形態をみる細胞診検査によって行われていたが、HPV検査の開発により2つの有力な検診手段が確立された。
細胞診検査は簡便で広く用いられているが、前がん病変(異形成)に対する感度が低い問題点があり70~80%にとどまる。一方HPV検査では特異度は細胞診に若干劣るが、感度は非常に高く異形成でも95%以上の高感度である。30才以上の婦人に対しては両者を併用すると前がん病変も含め見落としのない精度の高いがん検診が可能となる。また検診間隔を最低3年に延長することも可能になる。この併用検診を導入するには検査容器を液状細胞診とする事が前提となるが尼崎市は他市に先駆けて変更していただいたので問題ない。
本年はハーティ検査事業部からもHPV併用検診を勧める資料が我々会員に配られた事、日本でHPV併用検診を実施している自治体は徐々に増加し平成27年度現在165市町村(9.5%)であること、尼崎市は子宮頚がん検診受診率が全国平均よりかなり低率であることなどからも、30才以上のHPV併用検診を是非実施されるよう要望する。

5.予防接種(感染症対策)について
(1)兵庫県予防接種広域化システムへの参加について
平成28年度に川西市、猪名川町が参加し、県下にて不参加は丹波市、宝塚市と本市を残すのみとなりました。広域化システムへの参加が事務的負担を増加させるということも理解出来ますが、兵庫県での広域化が全国規模への広域化につながるという点からも兵庫県予防接種広域化システムへの参加を要望します。

(2)兵庫県小児予防接種推進事業への参加
兵庫県下41市町のうち当市を除く40市町が参加しており、より安全な予防接種を実施するために参加を要望します。

(3)定期接種者の接種漏れ、任意接種への助成制度の創設
定期接種の対象外となった児へのHBVワクチン接種、また定期接種の機会を逃した行政措置予防接種の対象者を含めムンプスワクチン、ロタウイルスワクチン等の任意接種者への助成制度および高齢者肺炎球菌の助成延長、高齢者の水痘ワクチンへの新規助成をお願いします。

(4)麻疹・風疹混合ワクチンの助成拡大について
平成28年は当市で麻疹のアウトブレイクがあり、本年度は沖縄でより規模の大きな麻疹のアウトブレイクがありました。麻疹・風疹の混合ワクチンを1回しか接種機会の無かった世代に追加接種を行うことが予防の観点から重要と考えられますので、助成枠の拡大をお願いします。

(5)新興感染症等に関する情報提供について
数年来、全国各地で輸入麻疹の発生が報告されておりジカ熱、デング熱等の輸入感染症の発生も社会問題化しております。このような新興感染症や輸入感染症に関する情報を迅速に提供していただくことを要望します。

6.乳幼児保健について
(1)発達障害児への支援・連携について
来年秋に開所予定のこどもの育ち支援センターに向け、多大なるご尽力をいただきありがとうございます。まもなくそのプレ事業も始まると聞いており大いに期待すると共に今後も医療からの連携協力を惜しまずの所存である。
5歳児健診の無い尼崎市では、発達障害が顕在化しやすい4・5歳児への取り組みの弱さや、就学前・後の情報の伝達がうまく機能していないと感じられる現状がある。
平成27年兵庫県下での5歳児健診調査では発達相談につながった児は10.3%と高率であった。
是非、新しいシステムの中で引き続き就学前の教育相談をはじめとする支援の強化と、それらの内容の就学後への情報伝達がスムーズに行われるための取り組みの強化を要望する。

(2)発達障害児への療育機関について
「児童発達支援」「放課後等デイサービス」等の発達障害児通所支援事業所については、自立支援協議会のあまっこ部会の中でも、内容の把握に向け検討されているが、市のホームページ掲載分を拝見すると70近い事業所が設立されているようである。
その実態、療育内容が依然よくわからず、紹介基準を持てない現状は続いており、統括部署による実態の把握と情報の提供、また各事業所と医師(主治医)との情報交換の場を要望する。
また、医療型児童発達支援センターであるたじかの園は、福祉サービスの要となる機関であり、さらなる機能強化を要望する。

(3)低出生体重児の増加に伴う医療的ケア児について
新生児医療の進歩に伴い、医療的ケアを必要としながらも通常の生活をしている医療的ケア児や在宅での支援を必要とする児が増加している。そのような児の成長に伴い、福祉および教育の問題が浮上して来ており、どのような体制で支援をしていくかということが今後の課題である。
多機関連携で対応できる小児在宅支援協議会設置の検討を要望する。

(4)新生児聴覚スクリーニング検査について
新生児聴覚検査は先天性の聴覚障害の発見を目的としている。しかし、尼崎市では検査にかかる費用が自費のため、その重要性を知る前に検査を受けていない新生児が散見される。平成28年3月29日付で厚生労働省より「新生児聴覚検査に向けた取り組みの促進について」という通達も出されており、実施主体である市町村がその事業の実施の実情を把握する必要がある。
現状での実施の実情の報告と、一般財源化された中での検査に対する助成を要望する。

(5)子どもへの医療費助成について
全国の自治体で子どもへの医療費助成が広がっている。本来の福祉的な意味合いから、人口減少緩和策として子育て世帯を呼び込むための施策の色合いが強くなりつつあると考える。
今年度7月から伊丹市が通院の助成を中学生までに拡大し、中学生までの助成がない市町は兵庫県下ではわずかになった。10歳~15歳の年齢層は全年齢層の中でも有病率が低いため、医療費助成対象年齢の拡大は市民サービス効果の向上に比し、大きな財政負担増にはつながりにくいと考える。
尼崎市から他市への子どもの流出を防ぐためにも、尼崎市でも子どもへの医療費助成の拡大を要望する。

(6)食物アレルギー対策について
日頃は、公立保育園及び法人保育園でのアレルギー対策にご尽力いただきありがとうございます。平成26年に作成いただいた公立保育所における食物アレルギー対応マニュアルと、同時に導入した生活管理指導票が定着し、法人保育園でも同様の書式のものを使われるなどご指導いただいていることをありがたく思う。一方、市内で小規模保育施設が増えている現状の中で、いまだにアレルギー対応の生活管理指導票(指示書)の無いところが散見される。
食物アレルギーを持つ児が増加しエピペン所持児もいる現状を踏まえ、実情の把握と共通認識に向けての指導、厚労省から出ている「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」の徹底を要望する。また、私立の幼稚園についても同様の指導をお願いしたい。

7.学校保健について
(1)色覚検査
色覚特性によって就学就職の制限がある以上、早い段階で自らの色覚特性を知ることは児童生徒が将来を考えるにあたって必要不可欠なことであると考えます。また、色覚特性に対する周囲の理解がない事は不当な扱いやいじめなどにつながっていることも危惧されます。尼崎市では平成29年度におこなった色覚検査の調査で、小学校では4人に1人、中学校では2人に1人が色覚特性を知らないままに将来に向けての努力をしている状態であることが判明しました。その結果、就学就職時の健康診断で突然希望していた進路を絶たれるという不幸な出来事が後を絶たない現状があります。
昨年度の要望に対する回答では、小学校4年生より下では難しいと回答された色覚検査ですが、市はこのような現状を改善するためにも早期に実施し、古い色覚検査表しか持っていない小学校24校には購入を学校任せにせず、一般的に推奨されている石原式色覚検査表Ⅱコンサイス版14表を速やかに配布し、中学校同様統一したスクリーニング検査をおこなっていただく様に要望します。

(2)学校で救命する為のAED及びエピペン講習会
アレルギー疾患の児童は増加しております。尼崎市ではアレルギー指示書の徹底によりしっかり学校で管理されております。しかし今年度もエピペンが学校で使用され救急隊との連携にて救命された例がありました。現在エピペンの講習は学校での養護教諭での指導が行われています。しかし総合的なアナフィラキシーに対する知識およびエピペンの使用講習会が各学校で開催されることが望まれます。
現在このような講習会に関しての予算は計上されていますが他の講習会と分け合う形となっており、実際はエピペン講習会として利用できる回数は制限されています。そこで希望される講習会が開催されるように予算の追加を望みます。
また、昨年度、学校にて迅速なAED使用により救命できた例がありました。
ひとえにこれは訓練の賜物です。今後も全ての学校で切れ目のない訓練をしていただき緊急時に備えていただける事を要望します。

(3)「がん教育」についての対応
がんは現在では国民の二人に一人が罹患する疾患と考えられているが、がんに対する知識は成人のみならず、小・中・高等学校の児童生徒に至るまで身につけておくべき国民の基礎教養である。平成24年に政府が策定した、がん対策推進基本計画でも「子どもに対しては、健康と命の大切さについて学び、自らの健康を適切に管理し、がんに対する正しい知識とがん患者に対する正しい認識を持つよう教育することを目指す」としている。これをうけて文部科学省が平成30年度新中学校学習指導要領の保健体育、生活習慣病などの予防の項目で「がんの予防」の項目が新設され、がん教育が正式に採用された。しかしがん教育は現在まだ手探り状態である。文部科学省は、がん教育を行う際には教員のみならず医療者やがん経験者などの外部講師とともに行うことを推奨しているが、現在の所尼崎市ではこのような教育を開始しているとは寡聞にして聞かない。
尼崎市として速やかな、がん教育の開始を要望する。元より尼崎市医師会は医療者として、協力することにやぶさかではない。

(4)学校検診結果検討委員会の設置
現在尼崎市が児童生徒に行っている学校検診に関しては、心疾患、腎疾患、結核以外は医師会側が主導する対策委員会は無く、特に2年前から開始された運動器検診の異常について全体的な検討は行われておらず、さらに今後開始される成長曲線の評価についての検討は、生活習慣病対策と同様、教育委員会の小児生活習慣病対策委員会が行うことになっています。この委員会には医師会側はアドバイザーとしての参加が認められており、結果報告のみを受けていることが現状です。
しかし運動器の異常、生活習慣病対策、成長曲線の異常のような、対策に高度な医学的な知識を必要とされる事案に教育職である校長会や養護教諭のみでは医療的評価や事後措置が十分対応できないと考えられます。そこで尼崎市医師会としては学校検診結果検討委員会の設置を要望します。

8.すべての世代で楽しめる安全なスポーツ活動の推進と市民の健康増進に向けて
尼崎市が、市民スポーツの発展に努力してこられたことは大変好ましいことです。
スポーツは精神的楽しみであると同時に、子供からお年寄りまで正しくスポーツをすることにより健康の維持・増進が期待できるものです。その一方で誤った方法でスポーツを行うと、事故が発生し慢性的なスポーツ障害が生じることになります。東京オリンピックを控えスポーツ熱はこれまで以上に活発になるでしょう。従ってスポーツ大会の実施に際してはますます安全に対する配慮が欠かせないと思われます。
またスポーツ大会で主催者が保険のように医師出務を求めるだけでは、本当の意味の安全性確立とはいえません。練習の場などで誤ったスポーツ指導が行われて事故につながることが多くあります(昨今のアメフト問題しかりです。)
ところで当委員会は平成29年度に、以下の要望をいたしました。
「安全で安心なスポーツ環境を整えるため、尼崎市は、当会スポーツ医を指導者講習会に活用するなどして、講習会をさらに充実したものにし、スポーツ医とスポーツ指導者との連携を強化していただきたい。」
これに対し貴市の回答では「スポーツ医が活動できる場の設定、確保について検討する。」との事でした。
さてこの1年間で、具体的にはどのような活動の場が検討され設定、確保されたのでしょうか、このことにつき再度お教えいただきたいと思います。
また尼崎市主催の具体的なスポーツ関連の指導者講習会などがおこなわれた実績があれば内容・講師など参考のためご教示いただきたい。

9.受動喫煙対策について
稲村市長が立ち上げられた「タバコ対策プロジェクト」をさらに推進され「タバコ対策推進条例」を制定されると聞き及んでおります。尼崎禁煙市民フォーラムがはじまった頃には考えられなかった長足の進歩であり、今回の条例制定をゴールとせずに更なる進化を考えておられる点にも非常に好感が持て、受動に限らず喫煙対策を考える尼崎医師会としては感謝を申し上げる次第です。ただ、喫煙はマナーの問題ではなく依存症の症状によるもので市民の健康に関わる問題であると言う考え方で「タバコ対策推進条例」のさらなる進化を続けていただくことを切に願います。「タバコ対策推進条例」が制定されましたら、それを記念して尼崎市主催の「禁煙フォーラム」の開催などはいかがでしょうか?その節には尼崎市医師会は全面的に協力致します。

10.がん検診について
がんは高齢化社会の進行につれて罹患率、死亡率共に増加している。この傾向に対して健診による早期発見、早期治療が最大の対抗手段であることは言を俟たない。しかしながら兵庫県疾病対策課の発表したデータによると、尼崎市では40歳から5歳きざみの無料健診クーポンを配布していた大腸がん検診の受診率は平成26・27年度での12.5%、13.6%と高くは無かったが、40歳のみの配布となった平成28年度では11.3%とさらに低下しており兵庫県41市町村中39位のワースト3位であった。子宮頸がん検診、乳がん検診でも5歳きざみの健診無料クーポンが平成26年度に廃止され、現在平成28年度では子宮頸がんは20歳、乳がんは40歳にのみクーポンの配布を行っている。その結果受診率は両がんとも41市町村中41位と最下位であり、平成27年度と比較しても受診率は子宮頸がんでは8.9%から6.1%、乳がんでも11.3%から9.1%と低下している。このような現状では尼崎市民のがん死亡率の低下は難しいであろう。尼崎市としては以前の5年刻みの無料クーポン発行でほとんどの市民の検診は終了しているはずで、後は一回だけの検診でカバーできるとの考えであろうが、検診受診率が10%以下では机上の空論であろう。さらに我が国では子宮頸がんワクチンの定期接種が短期間で実質的に休止状態となり、この状態に対応するには子宮頸がん検診が20歳の1回限りでは不足していることは確実である。
市の財政も厳しいことは承知しているが、無料クーポンの配布を以前の通り5歳きざみに復活させても、悲しいことながら検診率は急には回復しないと考えられ、実質的な財政負担は当面悪化しないと考えられる。しかし無料クーポンの5歳きざみの配布により検診率が徐々に向上すれば尼崎市民のがん死亡率の減少に大きく寄与するであろう。
以 上
要望は以上でありますが、子ども達の健康を守る医師会として、地域全体で子ども達を守ることを、要望書に付記させていただきます。

(付記)「学校と地域の連携について」
地域で児童を守りましょう!
平成30年6月徒歩で通行中の児童に、白い車に乗った男が車の中から「お菓子を食べさせてあげるから、車に乗らないか?」と言う声かけ事案が尼崎市内で連続しました。
新潟でもこのようなことがあり、とうとう児童が殺害される事件になりました。
この様な情報は教育委員会から該当学校の学童には知らされていますがその他の学校や地域に情報が伝達されることはありません。
しかし、子供達を守るのに必要なことは地域で、多くの眼で守ることが必要です。是非悲惨な事件にならない為にも情報を素早く地域の人たちと共有することができる様なシステムの構築を希望します。