第6回尼崎禁煙市民フォーラム(第559号 平成28年7月1日)

(第559号 平成28年7月1日)
公衆衛生委員会 担当理事 合志 明彦

 第6回尼崎禁煙市民フォーラム 平成28年5月28日 ハーティーホールで開催されました。
 今回の目玉は何といっても、稲村市長のご講演です。私としては、やっと片想いの相手がこっちを向いてくれたような少しだけウキウキした気分でした。黒田会長も今回のフォーラムが行政と医師会が一緒になっての禁煙運動のきっかけ(スタートラインに立てれば)にしたいとご挨拶の中で語っておられました。
基調講演Ⅰ は、公衆衛生委員会委員長長谷川吉昭先生に座長を務めていただき、稲村和美市長に「やります!尼崎たばこ対策宣言」という演題で、尼崎市のたばこ対策に対する考え方を示していただきました。自らも出産にあたってたばこを卒業されたと語られ、市制100年を迎えてたばこ問題も避けられないので、まずは事あるごとに批判が集中する市役所から意識改革を進めると宣言されました。
 そのたばこ対策の4本柱として
⑴たばこを吸わない人を育てます。
⑵禁煙を支援します。
⑶受動喫煙による被害をなくします。
⑷禁煙マナーを徹底します。
 を挙げられ、そのそれぞれについて
⑴については、身近な大人の喫煙が未成年者の喫煙のきっかけになることを含めた学校教育の重要性。
⑵禁煙のきっかけとしての毎月22日の「吸わんデー」を設定、スパイロメーターによる呼吸機能検査・ニコチン依存度チェック・禁煙相談などができる窓口を市役所本庁に設け、電話予約(06-6489-6797)が可能。
⑶では、兵庫県受動喫煙の防止などに関する条例の周知を図ることなどで環境整備を行うことを推進。
⑷では、①歩きたばこをやめましょう。②公的な空間においてはたばこは指定された場所で吸いましょう。③他人にたばこの煙を吸わせないように配慮しましょう。④未成年や妊婦をたばこの煙から守りましょう。⑤禁煙に努めましょう。⑥吸い殻などのポイ捨てを行わず街の美化に努めましょう。⑦事業者は従業員に右記の周知を行い、可能な環境整備に努めましょう。
 と喫煙者等へお願いすることを挙げておられました。

 禁煙運動に取り組んでおられる方々には、高らかに宣言された割にあまり積極的ではないと感じられる内容であったためか、座長の長谷川先生より「過料・罰則は考えておられないのか?」という質問がありました。これには「あまり強い対策を打ち出すと反発も考えられ、過料・罰則は今のところ適応せず、今後の状況により考えます。」とのお答えがありました。

基調講演Ⅱ 喫煙の有無を初診時に詳細に問診し、診察の度に喫煙についての質問を繰り返し、禁煙の動機につなげることが当たり前であったという米国での臨床経験をお持ちの公衆衛生委員会副委員長山前浩一郎先生に座長を務めていただき、横浜市の新中川病院で禁煙外来を続けておられ日本中で禁煙の活動をしておられる加濃正人先生にご講演いただきました。外来では、禁煙しようとしている人へのヒント、禁煙しようとするための動機付けの面接、禁煙を続けるコツの指導を行っておられるとのことですが、今回は「あなたの知らない禁煙法」と題して、主に認知行動療法についてご紹介いただきました。何の依存症でもそうなのかもしれませんが、「思い込み」「こだわり」「とらわれ」からの解放・考え方の転換法が中心になるそうです。中でも印象的であったのが、❶禁煙が完了したかを評価するのではなく、禁煙する技術を身につけることが重要であり、中断してもまた禁煙を始められるような技術を磨こうとの発想が禁煙に結びつく。❷イライラが耐えられないと感じる時に「どうしたらイライラしないか」を考えるのをやめて、「今日はイライラしてみよう」と思い切る。❸「できること」と「できないこと」を区別する。自分の感情や衝動は思い通りにならないが、不快な感情のままでいることはある程度可能であり、喫煙以外の日常生活をあるがままに送るようにする。
 などがありました。
 私が書くと 無理なこと言うなと一蹴されそうなので、昨年加濃先生が書かれたスポーツ新聞のコラム「禁煙成功のコツ」
http://www.hoyukai.org/shin-nakagawa/kinen/hint.htm
をご紹介してお茶を濁すことに致します。
 ご講演の内容も大変勉強になりましたが「日本はたばこ後進国であり、禁煙治療だけが進んでいます。たばこに限ってかもしれませんが、健康についての意識が低く、民意がついて来ないため、政治家も禁煙運動に積極的な対策が打てないのです。」という加濃先生のご意見が今回のフォーラムで一番心に残りました。

講演後 (尼崎市に対して)「現状で存在するたばこ税収入38億円を失っても市民の健康を保持できるのか? そのような覚悟があるのか?」という質問があり、次の公務のため中途退席された市長の代わりに健康福祉局保健部長福井進氏より「市全体のことを考えると税収入は必要である」とのお答えがありました。

 フォーラムにご参加いただきました全ての皆様、ご講演をいただきました先生方、公衆衛生委員会の先生方、誠にありがとうございました。片想いの相手にちょっとだけ振り向いてはもらいましたが、全くつれないお返事しかいただけず涙を飲んだというのが今回の正直な感想です。まあ、今まで全く前進しなかった行政を巻き込んだ禁煙運動のスタートラインに到達できたと前向きに考えて、今後も禁煙運動をいろいろな手段と場面で続けなければならない!と心に誓ったことをご報告致します。