医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業について(第597号令和元年9月1日)

医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業について
医療情報委員会 担当理事 山本  学
近年の医療法における病院等の広告規制
近年の美容医療サービスの拡大、医療機関のHPの充実や医療機関検索サイトの発展を受け患者・消費者とのトラブルが増加するなど、医療広告のあり方に関する問題が提起されてきたのを受け厚労省では、2017年6月の医療法改正において「虚偽、誇大、比較優良、公序良俗違反」のほか、省令で下記の「広告禁止事項」を定めた。
•患者等の主観または伝聞に基づく治療内容、または効果に関する体験談の広告
•治療等の内容または効果について、患者等を誤認させる恐れがある治療等の前または後の写真等の広告
また「医療機関のウェブサイト」等も規制の対象に加え、不適切な情報提供を行っている医療機関には中止・是正命令及び罰則を科すことなどが決まった。
これらの改正を踏まえ、2017年11月に厚生労働省の「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」が新たな省令と医療広告ガイドラインの案をとりまとめた。
さらに、2018年6月には、医療機関のウェブサイトも新たに広告規制の対象となり、法律に違反した場合の罰則規定(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金、もしくは20万円以下の罰金)が設けられた。患者個人のブログやSNSであっても、医療機関が広告料等の費用を支払うなど、医療機関への誘因性が認められる場合には広告規制の対象になるとしている。さらに医療広告ガイドラインと医療機関ホームページガイドラインは、一本化された。

監視体制強化事業の開始について
厚生労働省は、これまで各都道府県の衛生主管部宛に医療機関のウェブサイトについて、「医療機関ホームページガイドライン」に等に基づく行政指導の実施を依頼していたが、2018年8月に新たに「医療等に係るウェブサイトの監視体制強化事業」を開始する旨の通知を行った。その内容は、以下の通りである。
•委託業者が医療機関ホームページガイドライン等に違反する疑いのある、虚偽・誇大等の不適切な表示をそのウェブサイトで行っている医療機関に対して、医療機関ホームページガイドラインの周知を行う。
•周知を行っても改善対応が確認できなかった場合は、委託業者から都道府県等に情報提供がなされるので、その内容を確認のうえ、必要があると判断された場合には必要な指導をお願いする。
https://www.jsaps.com/docs/info/170825_system_business.pdf

厚生労働省委託事業「医療機関ネットパトロール」の強化
令和元年6月厚労省は「一般財団法人日本消費者協会」から「デロイト トーマツ コンサルティング」に委託業者を変更したと突然発表した。
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000522079.pdf
背景には医療機関のホームページに起因する美容医療サービスに関する消費者トラブルが発生し続けており、平成27年7月に消費者委員会より「美容医療サービスに係るホームページ及び事前説明・同意に関する建議」がなされたこと等も踏まえ、平成29年度よりネットパトロールを実施することで対応。しかしながら、美容医療以外にも、再生医療やがん免疫療法などについてウェブサイトの適正化が求められ、更に、医療法における広告規制の改正施行後は、規制範囲が拡大されることから、更なる監視体制の強化が必要。としている。
https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/000508617.pdf

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(Deloitte Tohmatsu Consulting LLC 略称:DTC)は、世界最大規模の会計事務所であるデロイト・トウシュ・トーマツ(デロイト)の主要メンバー企業であり、売上高432億米ドル、世界150ヶ国、25万人以上のエキスパートが連携し、経営戦略、M&AやITアドバイサリーなど多岐にわたる専門サービスを提供する世界最大級のグローバル経営コンサルティング会社である。(Wikipedia)

一番大きな変更点は急速に増大する審査対象サイト数に対応するため書面のみでの対応からWebを用いた対応に切り替えたことである。
http://iryoukoukoku-patroll.com/

参考(医療広告ガイドラインに関するQ&Aより)
平成29年度の医療法改正(第8次医療法改正)により、医療に関する広告規制が強化されました(改正医療法6条の5)。具体的には、これまで「広告」とはみなされていなかったウェブサイトについても、医療法上の「広告」に含めて規制の対象とされました。
①内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告。例えば「絶対安全な手術」「どんなに難しい症例でも必ず成功する」は、医学的にあり得ないので虚偽広告にあたる)
②他の病院または診療所と比較して優良である旨の広告(比較広告。例えば「日本一」「No.1」「最高」等の表現は、客観的な事実であっても優秀性について誤認を与えるおそれがあるため比較広告にあたる)
③誇大な広告(誇大広告。必ずしも虚偽ではないが、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、事実を不当に誇張して表現したり、人を誤認させる広告。例えば、美容医療サービス等において、撮影した術前術後の写真等をウェブサイトに掲載し、その効果や有効性を強調することは、誇大広告にあたる)
④客観的事実であることを証明することができない内容の広告(例えば、患者の体験談の紹介や医療従事者の主観によるもの等、客観的な事実であることを証明できない事項についての広告)
⑤公序良俗に反する内容の広告(例えば、わいせつもしくは残虐な写真・映像または差別を助長する表現等を使用した広告)などがある場合には、是正命令や罰則(6月以下の懲役または30万円以下の罰金)が課される
この広告規制は、ウェブサイトを開設しているすべての医療機関が対象となります。
www.medicalonline.jp/pdf?file=column_201907_01.pdf