第33回 尼崎市医師会〝学術デー〟

第33回 尼崎市医師会〝学術デー〟
「ICTで変わる近未来医療 -医師に来たる世界とは-」
6・2
生涯教育担当理事 夏秋  恵
6月2日(土曜日)13時半よりハーティホールにて、第33回尼崎市医師会学術デーが開催された。黒田会長挨拶に続き、兵庫医科大学医療情報学 前主任教授の宮本正喜先生よりコーディネーターコメントを頂き講演がはじまった。

1:「IoTの現状と数年後の未来」
富士通株式会社 イノベーティブIoT事業本部 ビジネス推進統括部 ソリューションビジネス部長 藤野 克尚 氏
モノのインターネットと呼ばれるIoT(Internet of Things)はセンサーを用いて環境だけでなくモノやヒトの状態をデータ化し、その状況を判定し提供する。これにより、今までにない観点からの問題解決を図ったり、全く新しい角度からのサービスを可能にする。富士通は長年培ってきた、〝人・物〟を中心とした独自の解析技術のノウハウをパッケージ化した「ユビキタスウェア」を提供している。例えば、「作業員の安全を見守る」は、人の動作や位置情報、脈、周囲の温室度などのセンサー情報を独自のアルゴリズムで解析しリアルタイムに遠隔管理者に通知。遠隔管理者は現場責任者へ状況確認し、現場責任者は作業員に休憩や救護指示ができる。これらにより、熱中症や脱水症状、転倒など労災事故のリスクを低下させ作業員の安全を守ることができる。また、「居住者見守りシステム」は、カメラで居住者を監視するのではなく、音響分析(イベント)を使ってプライバシーを尊重した遠隔見守りができる。マイク、人感センサー、温湿度センサーの情報により、生活の異常や健康状態の変化(室内の温湿度、頻度の高い咳の有無、いびき回数や大きさの推移による健康状態の変化、非常に大きな音を伴う異常事態の可能性)を検出、居住者の異常を早期に発見し、必要な対応が可能になる。すでに、施設での夜間の見守りや高齢独居の方の見守り等に利用されている。
何をIoTで与えられるか、IoTで何が享受できるか、IoTは様々な分野に活用できるものであり、適用活用範囲は無限に広がるものである。

2:「ビッグデータ・AIが拓く医療の未来」
京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 教授 奥野 恭史 先生
「人工知能AIによるレンブラントの新作が発表された」これは、レンブラントが多数の作品を現代に残し、その膨大なデータを人がAIに入力したからこそできた作品である。AIが独自の意志をもって創造して描いた訳ではない。現代の医療においては、画像診断にAIが有効だと言われているが、それもAIが独自の知能で診断するのではなく、例えば、先人が残してきた膨大な数の皮膚癌の写真と所見を入力してAIに覚え込ませて初めて答えを導きだせるのだ。
近年、ビックデータを解析する技術としてのAIが注目されている。京大がんセンターの癌患者の実臨床データ解析により、患者が死亡する200日前ぐらいから、好中球とリンパ球数の比率NLRの値が上昇し高値を示すことが明らかになった。さらに、ALB、LDH、好中球数の3つの検査値で構築した予測モデルで余命三ヶ月の予測に成功した。ALBが低下し、LDH、好中球が上昇するのである。がん化学療法患者の予後を解析・予測するには、死亡日を基点に各患者の時点をそろえることにより患者の体内状態の時間軸にそった標準化が可能であることを示している。医療ビッグデータを解析することで、個別化医療と予測医療が可能になり、病態変化、治療効果、副作用の予測や最適な治療戦略の推定、また新たなバイオマーカーの発見や創薬ターゲットの探索等行うことができる。

3:「国の考える数年後の未来に開業医はどう向き合うのか」
尼崎市医師会 医療情報委員会 担当理事 山本  学 先生
平成30年の診療介護報酬改定ではオンライン診療・テレビ会議・介護ロボット等の項目が新たに評価新設された。
昨年後半まで「遠隔診療」と称していたものが、今回の診療報酬の改定では「オンライン診療」と明記された。そもそも「遠隔診療」はICTを使って僻地や離島での医療サービスを向上させることが目的であったが、2017年度総務省未来投資戦略の一環として政府主導で政府・医療関係者のみならず既存大手通信会社・ベンチャー企業も多数参加した未来投資会議において対象が拡大し、名称も「オンライン診療」と変化した。今回の改定では適応疾患・設備環境の整備・対面診察を前提とするなど多くの制限があり、直ちに既存の医療へ影響があるとは考えにくいが、今後の改訂によっては、新たな診療スタイルとなる。
民間企業や研究機関では一般的になりつつあるテレビ会議が診療報酬として認められたことも多職種連携への対応として評価できる。介護ロボットは夜間の見回り等の補助に限定されたものではあるものの、AIやロボットによる人的資源有効活用への第一歩が始まった感がある。
今後、多職種連携には医療等分野専用ネットワーク構築が不可欠であるが、交わされる情報の質・量が多岐にわたり携わる関係者のITリテラシーが千差万別であるため構築へのハードルは高い。我々は一医療人としてネットワーク構築の重要性を十分理解したうえで、今なすべきことは何であるかを認識しなければならない。具体的には医師資格証の取得から始まり、院内のITリテラシー向上に努めることであると考える。
医療とて第4次産業革命とは無縁ではない。近い将来、Web上のHPが医院の玄関・窓口となり、電子カルテが診断をサポートし、モバイル無しでは在宅診療が成り立たない時代がやってくるかもしれない。

山本先生にはカタカナ、略号だらけの講演を少しでもわかりやすいものにするために、IT用語集を作成していただきました。ありがとうございました。
座長をして下さった生涯教育委員会委員長の日下先生、医療情報委員会担当理事の山本先生、中川先生、また、開催にあたり色々とご尽力賜りました生涯教育担当副会長の東先生、ありがとうございました。
今回は73名の先生方にご参加頂きました。参加人数如何では今後の学術デーの開催中止も考えられていましたが、参加者へのアンケートの結果、ほとんどの先生が学術デーの継続を希望されましたので、次年度、第34回学術デーを開催することが決定しました。今後ともご参加の程、宜しくお願い申し上げます。