第9回 尼崎糖尿病市民フォーラム(第576号 平成29年12月1日)

第9回 尼崎糖尿病市民フォーラム
11・11
地域保健担当理事 合志 明彦
第9回尼崎糖尿病市民フォーラムが平成29年11月11日ハーティホールで開催されました。晴天で絶好のお出かけ日和であったにもかかわらず、過去最多ではないかと思われるぐらいホールたくさんの聴衆が集まられました。ホールは熱気にあふれて、いかに参加していただくかに知恵を絞る禁煙フォーラムと糖尿病のフォーラムの性格の違いを痛感しました。

今回は、知っていますか糖尿病と動脈硬化と題して動脈硬化に焦点を当てた内容になりました。
基調講演座長は公衆衛生委員会の西村正仁先生に務めていただき、動脈硬化とはどんな病気?~糖尿病で私の足が切断に~というご講演を関西労災病院循環器内科大動脈末梢血管チームの南都清範先生に行っていただきました。
南都先生は、動脈硬化というと具体的な病名ではないので一般にはあまり動脈硬化のこわさが認知されておらず、これで血行が悪くなって足の壊疽を起こした人の四人に一人は一年後には亡くなっているほど始末の悪い疾患であることを広めたいと言っておられました。日本人の死因一位はガンですが、全身で起こる動脈硬化関連の疾患を合計するとガンと同じくらい数が多く、高血圧、高血糖、脂質の過多、喫煙などの血管内側にかかるストレスが原因である生活習慣病の結果であり、予防が大事であることは言うまでもありません。動脈硬化が起こると血流が減少、途絶し、心臓の血管で起これば狭心症・心筋梗塞、頭や頚で起これば脳梗塞、体幹で起これば大動脈瘤破裂、下肢で起これば歩行障害や足の壊疽などを引き起こします。
動脈硬化の治療、血管内の治療では、従来行われていたバルーンカテーテルで血管を膨らませる治療では内皮が痛み、さらに重度の狭窄を起こすこともあり、それを改善したステントを狭窄部に留置する治療に発達しました。しかし内皮の修復のかさぶたができて狭窄が起こるため、今は薬剤溶出性のステントを使うことで再発が少なくなり、さらに手術の技術も格段に進歩して不治の病ではなくなりました。
下肢の血管で起これば下肢閉塞性動脈硬化症であり、歩行時の痛みや間欠性跛行が起こりますが、腰部脊柱管狭窄症など腰部由来の疾患でも類似した症状が出ますので鑑別が必要です。足部潰瘍の原因は糖尿病より虚血によるものが多く、糖尿病の時には痛みがなく荷重部に病変が出やすく、虚血の時は踵・足趾など末梢に潰瘍ができることが多いそうです。また皮膚潰瘍を作る疾患には、静脈鬱滞性潰瘍がありますが静脈のうっ滞で起こるへモジデリン沈着が皮膚を黒っぽく変化させて下腿内側にできやすい事が特徴です。
これらの予防にはフットケアが重要です。血流のないところに創ができると悪化するため、爪の切り方、乾燥した爪のケア、保湿も必要で常に足の観察が必要なのです。

南部先生のご専門は腹部動脈瘤の治療であるとのことでしたが、その破裂が起これば90%が死に至ると言われています。喫煙との関連が非常に強く、大動脈の直径が5センチを超えると破裂する可能性が大きくなり要注意と言われています。破裂するまでは特に症状がなく、別の疾患の検査で腹部や腰部のCTを撮った場合に偶然見つかることも珍しくありません。そして、腹部大動脈瘤の破裂が起こった方はほぼ全員喫煙者だと言う衝撃的な結果も教えていただきました。

第2部 座長長谷川吉昭先生
フードモデル体験
採点してみようあなたの食事動脈硬化を防ぐ食事とは?
園田学園女子大人間健康学部栄養科
木下康子准教授、藤原たか子教授、塩谷育子准教授、 本田奈保子准教授
園田学園女子大人間健康学部栄養科学生の皆さん

「糖尿病の食事の基礎」
適正摂取エネルギーの計算法に始まる適正な食事
基本は腹八分目
健康を保つための5大栄養素を摂るために
出来るだけ多くの種類の食品を摂取
血糖コントロールに食物繊維 野菜 海藻 きのこ類
脂肪は控えめ
三食規則正しく ゆっくりよく噛んで

さらに動脈硬化予防の食事のコツは、
1  過食 運動不足の是正で適正体重の維持
2  肉の脂身 果糖を含む加工食品は控えめ
3  魚 緑黄色野菜 大豆食品 未精製穀類
4  果糖は控えめで糖質の少ない果物 みかんkiwi いちご
5  アルコール1日25グラムまで
6  食塩を多く含む食品を控える 6グラム/1日 薄味
7  抗酸化食品 カロテン ビタミンC・E
8  食物繊維 ひじき 切り干し大根 ブロッコリー おくら ごぼう
9  魚卵 クリーム菓子などのコレステロールの多いものは控える
10 和食:主菜 副菜2品ないし副菜+具沢山の汁もの 汁ものは塩分を考えて1日1回
11 食事療法は家族で一緒に

このような食事療法の基本となる座学を行なって

SATシステム食事の採点 ホール前方にセットしてある料理(フードモデル)をご自身の食事を想定してピックアップして、それを判定して栄養指導を行なっておられました。
採点の結果、全体の傾向としては、エネルギーと脂質の調整は良好でしたが塩分が多く野菜不足の傾向にあったそうです。

食品栄養価クイズ 料理の写真の裏に書いてあるカロリーを当てるゲームですが、だいたいの傾向はつかめますが、なかなか正確な数字は出せませんでした。

BMI計算も予想外の結果が出て顔がひきつる方、ほっと胸をなでおろす方など悲喜こもごも?な光景が展開されておりました。

ゲーム型参加型の講演で、遊び感覚での演者とやりとりで知識を得ていただくことができました。また、参加者が自由に動くことができるので、演者への質問や会話がスムーズに行えることが大きな収穫であったと思われます。

以上が私の頭を通したご報告でありますが、市民向けの健康講座である糖尿病と禁煙市民フォーラムは、私のような他科の医師には実臨床に役立つことが非常に多く大変重宝しております。内容はもとより学習時間の条件も満たしておりますので日本医師会生涯教育の単位の申請も可能だと思われますが、いかがなものでしょうか?