第1回尼崎市適塩化フォーラム開催される! (第558号 平成28年6月1日)

第1回
尼崎市適塩化フォーラム開催される!
5・8
ヘルスアップ尼崎・適塩化実行委員会委員長 勝谷 友宏
五月晴れで風が頬に心地よい5月8日(日)、尼崎市制100周年記念・未来いまカラダシンポジウム/尼崎市医師会設立100周年記念・第1回尼崎市適塩化フォーラムが、都ホテルニューアルカイックで開催された。サブタイトルに「あなたのカラダにイイコトday」と銘打たれた本イベントは、尼崎市が以前から全国に先駆けて実施してきた特定健診を中心とするメタボリックシンドローム撲滅キャンペーンの一環として企画したものに、尼崎市内科医会有志が立ち上げた尼崎適塩化計画推進委員会が「適塩化」をキーワードに加わり、尼崎市医師会設立100周年記念事業の皮切りとして参加したものである。一昨年に立ち上げた尼崎適塩化計画推進委員会には、内科医会から大原知樹先生、金山拓司先生、医師会から中川勝先生と中川純一先生の両理事に加え、腎保護の観点から槇林弘之郎先生にも加わっていただき、県立尼崎総合医療センターの循環器内科の先生方、兵庫県栄養士会、武庫川女子大学、尼崎市ヘルスアップ戦略担当、尼崎市教育委員会、都ホテルニューアルカイックなどのメンバーが参加し、委員会自体も減塩フルコースが提供できる割烹(うを治)や中華料理店(王中)、健康カフェ(ポノポノ食堂)で開催し準備を進めてきた。今回のイベントは市と共同のプロジェクトということで、ヘルスアップ尼崎・適塩化実行委員会を立ち上げ、私が委員長を拝命、市役所の中浦局長、野口緑部長が核となり、尼崎市商工会議所、尼崎市薬剤師会なども加わり20回以上のミーティングを重ね、プログラム作成、広報活動、寄付・広告集めに奔走し、最後は医師会、歯科医師会、そして何と言っても医師会会員の先生方のボランティア精神溢れるご協力のおかげで当日を迎えることが出来た。この場を借りて、厚く厚く御礼申し上げます。
さて、朝9時30分に始まったイベントでは、稲村和美尼崎市長の挨拶を皮切りに、午前中は「脳・心臓血管病を防ぐまちを目指してきた取り組みを振り返る」と題して、尼崎市がこれまで行ってきた生活習慣病に対する取り組みの背景、現状、介入の結果を、大学、厚生労働省、医師会、企業の立場から概説した。特定健診導入のきっかけとなった尼崎市の市職員に対する早期介入の効果や、メタボリックシンドロームの概念の提唱、特定健診導入に至るまでの様々な困難とその成果について、元大阪大学教授の船橋徹先生と、元厚生労働省健康局長の矢島鉄也先生から詳細な発表が行われた。その後、尼崎の市民の健康を守るために、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の治療・予防に取り組む尼崎市医師会の活躍について、黒田佳治会長より、具体的なデータも含めて紹介がなされた。シンポジウムの最後には、ローソンCHO補佐の宮崎純氏より、健康関連商品販売だけでなく、特定健診への場の提供、社員の健康管理への取り組みが示されるとともに、コーポレートスローガン(いわゆるキャッチフレーズ)が「マチのホッとステーション」から「マチの健康ステーション」へ変化した話題なども提供された。さらに、特別講演として、経済産業省ヘルスケア産業課長の江崎禎英氏より、「高齢化社会への対応~健康のまちづくりを目指して~」と題して、企業や政府の健康に対する投資がこれからの日本の原動力になるだけでなく、社会基盤整備にもつながるとするエネルギッシュな講演があり、午前の部を終了した。
3階の講演会場前には、内臓脂肪測定や血管年齢測定、減塩食の販売など10ブース以上が軒を並べ、その奥では「千年の一滴 だし しょうゆ」という出汁を作る昆布や鰹節、しょうゆの製作過程を美しい影像で見せる日仏合作ドキュメンタリー映画も上映された(詳細は上野透先生の名解説をご覧下さい)。映画上映会場では、ミシュランの三つ星シェフが作るリゾットも提供され、3回転の上映はほぼ満席状態だった。ホテル外の芝生広場には10を越える屋台も並び、野菜たっぷりのジュース、ジェラート、減塩中華丼などの販売が行われ、講演には二の足を踏む子ども連れの親子も、涼風の芝生広場で味覚からの生活習慣病予防を体感した。
屋台と会場の動線の中間にあるシビックギャラリーには、医療相談、栄養相談、お薬・禁煙相談のブースが設けられ、200名を越える相談に医師、栄養士、薬剤師が対応した。中でも大原知樹先生が終日責任者を務められた医療相談ブースでは、おひとり1.5~2時間で延べ10名もの尼崎市医師会の先生方にボランティアでご対応いただき、関西労災病院の山本恒彦先生、県立尼崎総合医療センターの北祥男先生にまで御助力を賜った。また園田学園からもSATTシステムという食材サンプルを自分で選べば瞬時にカロリーを目の前で計算してくれる「見える化」出展が行われており、参加者が自分で測定した血圧や血管年齢、摂取カロリー、相談事などを書いた紙を手に、ブースを回る姿が絶え間なく続いた。
午後の部は、私の恩師でもあり、森ノ宮医療大学学長の荻原俊男先生から「高血圧の予防とつきあい方~健康寿命の延伸は減塩から~」と題して、生活習慣病予防における高血圧の重要性と減塩の意義が述べられ、男性8グラム、女性7グラム、高血圧患者6グラムといった具体的な食塩摂取量、日本人は食塩感受性民族であることが遺伝子解析でも示されているといった内容が紹介された。これを受けて、国立循環器病研究センター(国循)の平野和保先生からの「かるしおレシピ」が紹介され、具体的に美味しく適塩化を実現するための匙加減について、今日の晩ご飯から役立つ内容が示された。さらに、聴衆の最も感心が高い認知症については、糖尿病や高血圧などの生活習慣病こそが認知症発症リスクを高めるので、適塩化こそが「呆け予防」につながる習慣である、と国循の猪阪匡史先生から明快に最新知見が示されたのに引き続き、スポーツクラブルネサンスの佐藤ひさき指導員からは、講演疲れの聴衆の頭とカラダをリフレッシュする認知症予防体操が披露された。そして、お待ちかねの特別講演では、旭山動物園園長の坂東元先生(獣医師)より「動物から学ぶ~命輝かせて」と題して、可愛いや珍しいでなく、野生に近い形で動物を飼育する旭山動物園の理念にはじまり、オランウータンを中心に動物たちの出産や死の実情が動画で示され、これに真摯に向き合う園長や飼育員達の姿勢、愚直なほどに真っ直ぐな動物達の素顔に、多くの市民が心を揺さぶられた。最後に「子どもの頃からの生活習慣予防」というリレートークで次世代の食育、教育への提言がなされ、中でも「子どもを甘えさせても甘やかすな」という杉原加寿子先生からのお話は、動物達のポテンシャルを引き出すために本当に必要なことを語った坂東園長の講演内容を踏まえて説得力のあるものとなった。非常に内容を殆ど休みなく盛り込んだ「あなたのカラダにイイコトday」は17時過ぎに閉会となったが、延べ2000名を越える市民が参加した本イベントは晴天にも恵まれ大盛況であり、カラダにイイものを食べて、飲んで、学んで満足した、との感想が多くの市民から聞かれる1日となった。ご参加いただいた先生方、ご協力いただいた先生方、本当に有難うございました。